誉れの夏41



 いくらも眠らないうちに起床ラッパが鳴り響き課業が始まった。


 俺達は明け方に夜間行軍を四十キロほど終えて、幹部候補生学校へ帰隊したばかりだ。

 

 山越えの途中で踏み潰した血豆の痛みをこらえながら、いつものように演習で使用した装備品の洗浄を徹底的にやって格納する。


 天幕の杭一本から銃剣やシャベルに至るまで、よく洗ってから廃油を含ませた布で丹念に拭きあげていく。

 

 足腰に行軍の疲れを鈍く重たく残したままで、営庭を吹き抜ける風までが眠気を含んでいるように感じながら黙々と作業を続ける。

 

 営舎に入り居室へと続く階段を上がっていくと、廊下には靴墨と洗濯用洗剤と汗の匂いが入り交じって流れ、


青春と戦争準備を調和させようと努める精神の軋みと不可思議なハーモニーを奏でているように思われた。