誉れの夏 5
空は日中に支え続けた重苦しい不快さを地上に叩きつけるように、激しく雨を降らせ続ける。
閃光が夜を切り裂くたびに、雨足は太さと力強さをいっそう増していくように思われた。
待っている。
俺達はただ待っている。
夏の夜に激しい雨に打たれながら、タコツボに入って立ったままひたすら敵を待っている。
水は腰のベルトの高さをすぐに超えて、胸ポケットの線に迫ってくる。トイレがあるわけもなく、そのまま泥水中に放つだけ。
僅かでも体をずらせば、背中を伝わる水の流れが一本一本変わるような気がしたが、そんな雨とつきあいながら、構えたライフルの銃口にだけ意識を集中させようと俺は試みている。
今、九州地方の丘の上で、数十名の若者が陸上自衛隊の士官になるべく戦闘訓練に取り組んでいる。
こんなことは大多数の国民は知らないし知ろうともしない。知らせようとするメディアの動きは驚くほど貧弱だ。
政治屋は政治屋で、その下劣な温顔の下で、俺達を政争の具としてしか扱おうとはしない。