滝の畔
夕暮れに彼女を見送った夜からまた、メールが返らない日々が容赦なく続いた。
深まる秋を追いかけるように、恋しさと不安にもがき苦しむ夜と昼が訪れては去り、
積み重ねられる『恋人の不在』が限度を超えそうになってきたとても寒い朝に、和喜からの着信音が半月ぶりに鳴った。
―『スウィートノベンバー』ありがとう!貴方は、私なんかとはやっぱり釣り合うひとじゃないわ。
今ね、私つきあい始めたひとがいるの。
私の人生で、貴方と過ごす時間を持てて嬉しかった。
忘れないからね、私のことも忘れないで!約束だよ。さよならは言わないから・・元気で ー
思わず反射的に電話をかけようとしたが必死で思いとどまった。
今さらなんにもならないことだし、してはならないことだ。
俺としては、彼女のこれからの人生が、幸せに満ち溢れていってほしいと願うばかりだ。
シナリオでの俺の出番は終わり、新しい名前が記されたのだから。