滝の畔


「薬がまた増えてきたの」


秋の星座を支える夜空から舞い降りてくる飛行機が、翼で明滅させるライトを瞳に映しながら、ナビゲイターズシートで彼女はそうポツリと言った。


 久しぶりに昼食も一緒にして、陽が落ちるまで激しく求め合った日の終わり、二人は初めてくちづけた河川敷の駐車場で過ごしていた。


「最近は、互いの家が遠いからすぐに逢えないとか、ヘルプも忙しくなってきたし  都合がつかないからまた今度とか、気分が悪いから無理とか、振られっぱなしだったから今日は本当に楽しかったよ。でも、この頃はどうしてメールあんまり返してくれないの?」俺は気になっていたことを最後に聞いた。


「どうしてかわからない。自分でもね」彼女は静かにそう言うと、瞳を閉じて少し口を開いた。