滝の畔
過ちは隠そうとすればするほど大きく見えるのは知っていたが、間違った直後にムキになって俺が釈明のメールを何度も送り続けたことも、疑念を強める結果につながったようだった。
「もういいかげんにしてくれよ。何ならたった今ここで電話してみろよ!あのマダムにさ。俺とどういう関係ですか?ってね」
怒気を含んだ声で俺が叩きつけるように言うと、和喜は、まっすぐに前を見たままで唇を噛み締めて黙り込んだ。
俺は、二人がこれまで薄氷を踏むようにではあっても、時には何度も抱きしめ直すように甘くたゆたっていた小さな世界から、
つまらない出来事のせいで後ずさりを始めたことをどうしても認めたくなくて、叫びだしたいような激情をねじふせながら車を走らせていた。