滝の畔


 夏の終わりから、和喜は夜の仕事に出るようになった。生まれ育ったよその土地で、十代の末に店に出て以来、


まるで自分の天職のように感じてきたのだと一度話したことがあったが、昼はこれまでどおり福祉施設の栄養士を続けながら、知人のスナックにヘルプで入るようになっていた。

 

 夫が嫌がるとは言っていたが、これを始めてからは、薬もほとんど要らないほど気持ちが落ち着いてきたと、デートの時に嬉しそうに話してもいた。

 

 俺は、そういうことならと安心もしたが、和喜がそういう時間を過ごしているのを一人の部屋で思い浮かべていると、たまらなくなることがあった。


大人気ないことだとわかってはいたが、また、夫でもないのにと思い直そうともしたのだが、


和喜が帰宅する午前二時、三時まで目が冴えて眠れずにメールを送ると「まだ 起きてたの?バカね 今帰ったよ オヤスミ」と、たしなめるような返信を受け取ることもしばしばだった。