滝の畔
すばやくドアを開けて乗り込んできた彼女と一緒に、ダナのアンブッシュの香りが流れ込んだ。
フルーティスウィートなベースに、ややトロピカルなタッチが混じっている。
今からミドルノートってところかと思った俺は「初めまして 待ち伏せの女王様」と、瞳を合わせながら明るく言った。
「待ち伏せ?なんでよ?」ちょっと先が上を向いた小さな鼻と、あと10年もすれば、三重や四重瞼になりそうな大きな二重で茶色がかった瞳が怪訝そうに瞬いた。
「アンブッシュじゃないの?ダナでしょう?」
「あ 待ち伏せね。わかったの?へーえ なかなか隅に置けないね~」
「隅に置けないって、まだ会ったばかりだよ」おもしろそうに俺が言うと、彼女は、身体ごとこっちへひねって正面からまじまじと俺の顔をのぞきこみ「う~ん もっとマジメそうな人かと思ってた」と真顔で呟いた。
車を出すとすぐに彼女は煙草を取りだした。
ルーシアという、香りがきつくないタイプの銘柄だったが、タイトなジーンズの脚を組み、乳房の線よりも長めの明るいブラウンの髪を風になびかせて手際よくおいしそうに紫煙をくゆらせた。