『オレンジビーチ-スリーデイズメイビー』


移動が

 移動が完了するとすぐに編制された斬り込み隊を北村は指揮することになった。


 命令受領して戻ってくると、急に香月上等兵が懐かしく思い出されたが、二人が離れてから二ヶ月余りしか経っていないというのに、


彼と過ごした日々がもう遠い昔の出来事のような気がして北村は思わず胸を詰まらせた。


 アロウの瞳もまたありありとよみがえった。


 海原を渡っていく白い大きな鳥の伝説、彼女が父親にめぐりあえる日が早くやってきますようにと北村は心から祈らずにはいられなかった。


 南風に吹かれながら二人並んで座った美しいビーチで、彼女が聞かせてくれたパラオの諺がリフレインした。


 「おにいさん 自分の土地で血を流した人とは、永遠の家族になるってパラオでは言うのよ。でも私は、おにいさん達とそんなふうに家族になんかならなくてもいいの」


思い詰めたような瞳で言うアロウの口元を見つめながら、北村は優しい気持ちで胸が満たされたのだった。


 あの時にビーチに寄せていた波は夢のように美しく透きとおっていて、まだオレンジ色には染められていなかった。