『オレンジビーチ-スリーデイズメイビー』
北村は青山少尉にその話をした。
彼は膝を抱いたままで黙って最後まで聞いていたが、立ち上がると
「白も黄色も同じ人間なのにな。彼らはこれまで傲慢過ぎたから、これからもきっと長い報いを受け続けていくに違いないよ。残念なことだけど」と答えて、命令受領へと向かった。
少尉はきっと「みんな同じ神の子なのに」って言いたかったに違いない・・そう北村は思った。
キリスト教に接したことはないけれど、青山少尉が信仰しているのなら、そう悪い教えでもなさそうだ。
アロウの父親もキリスト教徒なんだろうな。
でもそんなに方々に神っているものだろうか?
神は自分を信じる者同士を殺し合わせて平気なのかな?
少尉は周囲から白い目で見られないように、宗教のことをはっきりとは明かしていないけれど、どうしようもない矛盾や煩悶をどう乗り越えているんだろうか?
時間ができたら聞いてみよう そう北村は思った。
時間ができたらだ。この戦争が終わって、時間ができたら解き明かしたいことが山ほどあるような気がした。
青山少尉もそう思っているに違いない。
もしも時間ができたなら、勉強したいことがたくさん俺にもあるんだから。