『オレンジビーチ-スリーデイズメイビー』


 夕暮れが近づくと、あちこちの洞窟から「海ゆかば」の歌声が響き始める。


 歌い納めた兵士達は思い思いに恩賜の煙草をいただき、故郷の話を交わすと、三人ひと組となって陣地を出て、


鉄条網と積み上げた砂嚢で幾重にも固められた敵の拠点に向かって勇を振るって攻撃をかけていった。


 二度と還らない組が多かった。


 敵は、夜通し打ち上げる照明弾に加えて、それまでに各戦場で使用していた夜間照準器を多くの銃に装備していたし、


ガダルカナルでもそうだったように集音マイクも多く設置していたから、察知されずに敵陣へ接近するのはほとんど不可能だった。


 迫撃砲弾が降ってくることもあったし手榴弾の一斉投擲にあうこともあった。


 叫び声があがると同時に突然に撃ちすくめられて伏せる、伏せれば手榴弾が飛んでくる、


たまらず立ち上がればたちまち多くの曳光弾の帯が集まってきて体に吸い込まれていく。


 夜間の斬り込みは次第に日本兵の死体の山を築くだけとなりつつあり、敵に出血を強要するどころか、夜ごとに地区隊の命をすり潰していくだけの結果を招くようになっていた。