『オレンジビーチ-スリーデイズメイビー』


 射撃姿勢を取って待機に入ると、小銃を握る手から微かに血の匂いがした。


 敵兵の遺体にふれた作業で付いたものに違いない。


 大場は水筒から僅かの水を口に含むと手に吹き付けて洗った。


 不意に爆雷を仕掛ける前に見た青い瞳が浮かんできて、何かやりきれない思いが胸に突き上げた。


 俺はおまえが憎いわけじゃないんだ。


 ただ、おまえ達を本土へ上げるわけには絶対にいかないんだ。


 俺は俺の故郷を護るよ。倒されるまでのおまえも、きっとそういう気持ちだったに違いない。


 先頭に立つ水陸両用車のエンジン音が響いて、一隊の敵がやって来るのが待ち伏せる地区隊兵士の視界に入った。


 一斉に小銃に装填する金属音が響いて、各兵士は射撃体勢に入った。


 仕掛け爆弾が爆発したら正確に狙撃する、一人たりとも逃がさないで。


 停止した水陸両用車が車載機銃で遺体の手前を一連射した。


 腹に響く重い発射音が轟く。


 仕掛け爆弾を警戒しているらしい。


 もう一連射。遺体は沈黙したままだ。


 匍匐してきた指揮官らしいのも発砲した。


 やはり爆発しない。水陸両用車が微速前進を始めた。


 敵兵は匍匐をやめて、小腰を屈めた姿勢でやや展開しながら装甲車両について進んできた。


 もう少し引きつけよう。近くへ来い。あと少し近づいて来い。おまえ達の青い目玉がよく見えるまでこっちへ来い。


 大場は指揮官らしい兵士のヘルメットに狙いをつけて、青山少尉の発砲命令を待った。


「撃て!」


 号令と同時に鋭い乾いた発射音が連続して起こった。


 どさりと音がして敵兵が膝を着き前のめりに倒れ伏す。


 あるいはヘルメットをはじき飛ばされて仰向けに倒れる。


数名の兵士達が瞬時にヘルメットや胸の真ん中を撃ち抜かれて動かなくなった。


「誘爆させろ!」誰かの声が響いた。


 遺棄死体へ向けて数発の手榴弾が投げられ、まもなく伏せたまま応射中の敵兵と援護の水陸両用車の銃撃音をかき消すように遺体は爆発して周囲の敵兵を一気になぎ倒した。