『オレンジビーチ-スリーデイズメイビー』
照明弾の青白い光を避けながら飛行場を抜けて中央高地帯へ向かう途中、友軍に刺殺されないように細心の注意を払いながら北村は慎重に歩を進めた。
背には、ろ獲した照準鏡付M1ガーランドスナイパーを野太刀のように斜めに負い、懐には手榴弾数発とズボンのポケットに敵の実包を50発ほど。
戦闘帽に首筋を護る和手拭いを垂らして、右手に小銃を抱えたいでたちで。
早く友軍の歩哨線にたどり着きたい、戦闘陣地の前縁に達して友軍と合流したい一心だったが、
気ばかり焦る移動の途中で、真ん中を撃ち抜かれた敵のヘルメットが多数転がっているのに出くわした。
敵の遺棄死体は回収されたらしくほとんどなかったが、友軍の狙撃がこの一帯に集中したことを考えると、洞窟陣地が付近にあることは明らかだった。
神経を研ぎ澄まして全周に注意しながら、北村は照明弾の光が辺りを照らし出すのを待った。
青白い光に浮かび上がる火炎に焼け焦げた一条の線が、散乱するヘルメットから上方にまっすぐに延びているのが見えた。
この延長戦上に洞窟陣地の入口があるはず。
誰かいないか?
北村は横から入口に取りつき、官姓名を低く名乗ると反応をうかがった。
幾度か繰り返したが応答はない。
思い切って飛び込み、ほどなく主道からそれた薄暗い横穴を見つけると体を横たえた。
焼き米と水筒の水を少し、それと敵の残した雑嚢から取ったレーションを口にすると、北村は急に気が緩んでしまってすぐに初陣以来の眠りに落ちた。