『オレンジビーチ-スリーデイズメイビー』


 心なしか飛び交う銃声が遠のいていく気がして、エンジン音もしなくなったように感じた。


 北村は敵の突撃に追い越された場合は戦死者を装うことにして神経をなるべく張りつめておこうとしたが、


長時間耐え抜いた緊張からか、暑さを打ち負かすような強烈な眠気と戦わねばならなかった。

 

 幾度かたまらず瞼が閉じようとするのに必死で抗って、北村は周囲の戦闘の気配が去るのを待ち続けた。

 

 いつしか照明弾が打ち上げられ、青白い光が戦場を照らし出し始めて、北村は夜が訪れたことを知った。

 

 飛行場を離れ、中央高地帯の地区隊陣地群寄りへ自分が位置しているのではないかと思いながら、タコツボへ座ったままでポケットを探ったが作戦図もなく、


かといって周囲の状況がまだ不明のままでは不用意に立ち上がるわけにもいかず、返り血がこびりついた軍服の上から、彼はまず急いで外傷の有無を調べた。


 特に痛む箇所はないし出血もないようだった。

 

 安心して少し落ち着いてくると、気温がいくぶん下がり始めたのがわかった。


 照明弾の合間に南の星々が輝き始めているのが見える。


 銃声がまったく途絶え、敵は、大嫌いな「夜の日本軍」に備えて陣地に入り、防御を固め始めた様子だった。