『オレンジビーチ-スリーデイズメイビー』
自動砲を指揮する李 卓玄少尉は、急速に南海岸へ向けて浸透してくる敵を支えようと阿修羅のように戦っていた。
飛行場をほぼ制圧した敵は、西海岸へ残る陣地群の掃討と並行して南海岸を占領確保すべく戦車を先頭に押し立てて怒濤のように進撃してきた。
あらかじめ準備してあった航空爆弾を利用した地雷を爆発させ、何両かを動けなくしたりしたが、
火炎瓶の投擲が届かなかったり、猛烈な車載機銃の掃射に圧倒されたりして、李 少尉の部隊や協働部隊の損害は急速に増えていった。
砲弾が残り少なかった。あと数発となった時、接近してきた敵戦車の主砲と車載機銃の集中射を浴びて
少尉の指揮下にあった最後の自動砲は粉微塵に砕け散り、負傷してもがく兵士達をキャタピラで踏みにじって戦車は突進してきた。
後続の海兵達は喚きながら自動小銃を乱射し、僅かでも動きのある個人壕には手榴弾を投げ込みながら前進してくる。
少尉は手元の擲弾筒を操作して残弾を総て発射して数名の敵兵を倒し、破壊されずに残っていた一基の迫撃砲から数発の砲弾を連続して敵の群れに撃ち込んだ。
戦車が一時停止し、随伴する海兵達に動揺が走った間隙を突いて少尉は後方の壕へと退避するために走った。
あがった息を静め、周囲を見回してみると、もはや掌握できる部下は一人もいなかった。
轟音を轟かせて上空を通り過ぎる飛行機を見上げると、翼に白く描かれたソロモンの星が目に入った。
あちこちに大きく空いた艦砲射撃の穴を避けながら接近してくる戦車と、随伴してくる海兵の群れを見つめながら、
李 少尉はいつも胸ポケットに入れている北之口大佐に贈られた万年筆をしっかりと押さえてみた。