『オレンジビーチ-スリーデイズメイビー』



二人は現実の前で無力だった。別離に立ち向かうどんな術も持たなかった。


「どうにかして」彼女は絞り出すように言った。


「辰也さんだけは戦争に行かなくてすむようにできないかしら?」


「他の人は戦うのにかい?」


「二度と会えないかもしれないのよ! 私達だけでどこかに逃げられないかしら?」


「男のすることじゃない!」


 語気を強めてから彼女の頬が濡れているのに気づくと彼は優しく手の甲で涙を拭った。


「戦える者が前に出て防がないと亜季子の盾に誰がなるの?僕は亜季子のために生きたいし亜季子のために命を賭けたい。肉親と郷土を守りたいんだよ。国民が勇気を振るって最後まで戦い抜くことが、天皇陛下の御心に添い悠久の大義に生きることだと信じてる」


「亜季子への愛と日本への愛は僕の中で一直線につながってるんだよ。恋い焦がれる気持ちはひとつ 命を投げ出す値打ちがあるもの」


 艶やかな彼女の髪に唇を押し当てながら辰也は自分に言い聞かせるように囁いた