「よ~し!これぐらいでいいだろう」そう『陣内君』の声が響いて、手術はどうやら終わる気配だった。「一番怪しい箇所は総て採取しましたからね。
これで結果がハッキリしますよ」と、子分の『ドンキー』が言った。
あの横柄な『やっさん助教授』は、いつのまにか煙のように!?消えてしまっていて、ストレッチャーに移された私は、天井の手術灯に見送られてガラガラと廊下へと引き出され病室へと戻された。
待っていてくれた家人が不安げな様子で「これで結果が出るまでにまた時間がかかるんだよね~」とつぶやいた。
そう、2週間ほど経てば今度こそ本当に結論が出る・・これまで何度も何度も蛇の生殺しにあってきたけれど、いよいよこれで『戦闘の帰趨』が最終的に決まってしまうわけだ。
「これで決まるなあ・・激戦によく耐えてくれたよ おまえ達も」と、私は『自己免疫力』という名の『体内の配下部隊』に静かに語りかけた。
フッと思わず息をついた私が「いずれにしても、もうこの手術を受けることはないと信じたいけどね」と家人に話しかけると、ベッド脇の小さな椅子に座った彼女は、持ったバッグを強く握り直すようにすると小さく頷いた。
子供達に伝えてほしい適当な言葉も思い浮かばないうちに、家人は三人が待つ家へと帰って行った。
頻繁にナースが様子を診に来るために眠れない第一夜が明けて、私はバルーンカテーテルを膀胱に入れられたままで体を起こしてみた。
するとまもなく、発病以来一度も感じたことの無かった猛烈な頭痛が襲ってきて、私は何事が起こったのかと驚いてナースコールを押した。
駆けつけてくれたナースに「ちょっと経験のない痛みがするんだけど、至急主治医にそう伝えてほしい」と頼むと、
彼女は「先生が来られるのにはもうしばらく時間がかかりますけどそう伝えますから」と事務的に言い残して立ち去っていった。
私は、う~ん 全然慌てないところを見るとたいしたことないのかな?でも、あのナースの専門知識が足りないってことも考えられるし・・彼女はまだ若いしなあ などと思いめぐらしながら痛みに耐えて天井を見つめて仰向けになっていたが、
しばらくすると割れるような頭痛がすっかり無くなっているのに気がついた。ようやく取り戻した落ち着きの中で、私はふと、ひょっとしたら一足飛びに脳へ転移したのかもしれないと思った。
