横たわる私の傍へツカツカと大股で歩み寄ってきた『やっさん助教授』は、両手を腰に当てるといきなり「どうだ!痛いか?」と横柄に言い放った。
なんだ 偉そうに!と思った私が、やや上体を起こして少し頷くと、「フン」と鼻で笑った彼は突然「ワハハハ」と手術室いっぱいに響き渡るように大きく朗らかに!?哄笑したのだった。
こいつもまた、無抵抗な患者をつかまえて何という口の利き方をするんだろう?
いったい何が可笑しい?こういうのがよく医者の卵達に対して「指導」ができるなあ・・
私は、助教授回診時に若手の医師達が彼に取る卑屈なまでに従順な態度と、ほぼ一様に浮かべるお追従笑いを思い出した。
これじゃあ患者を「人間」として扱わずに、単なる被験者か自らの出世の踏み台ぐらいにしか思わない医師達も育つわけだ。
笑ってる場合じゃないんだよ こっちは!『やっさん助教授』は、私の『主治医団』に痲酔のことで2,3質問をし、手術開始を促した様子だったが、
管を体に通され、今は手術を受けるしかない無念な境遇でさえなければ、片手で彼の髪をつかんだまま殴りつけてやりたい気分だった私は、まっすぐ天井の手術灯を見つめてひたすら黙っていた。
馬鹿野郎が!誰が好きでこんな格好をし、何度も何度も痛い目にあいにくるものか?いったい自分を何様だと思っているんだ?
突き上げるような激しく沸騰する憤怒が湧いてきた瞬間に「まあまあ おエライ助教授様ですから」と、体内から『配下部隊の勇者達』の一人がなだめてくれた気がした。
やや落ち着きを取り戻した私は、もうお馴染みになってしまった、電気で膀胱内を焼き削っていくターブト(TURBT)=(経尿道的膀胱腫瘍切除術)の世界?へスグに引き込まれていった。
