ガラガラと音を立ててストレッチャーが動き出した。
病室から廊下に引き出されると、私は付き添っているナースの肩越しに、天井を搬送用エレベーターへと続く照明の列を見つめた。
バルーンカテーテルは終わったから次は下半身麻酔だなあ・・脊髄に打ち込む時に失敗しないでほしいけど、今日もまたいつものように運を天に任せるしかないわけだ。
いったいこれから何度こういった目にあわされることだろう。これまでの戦法が今度はどのくらいの成果を挙げているだろう?
進行度が下がっていればいいが、もし逆だと主治医団はここでもまた勢いづいて膀胱の全摘出を迫ってくるんだろうな。
そんなことを考えているうちにエレベーターが止まって、手術室へと続く通路へと出た。
ソファに座って既に始まっている他の手術が終わるのを待っている人達を横目で見ながら私は運ばれていった。
手術室への第一のドアが開く時、私は「また 帰ってくるぞ」と心の中でつぶやいた。手術台へとシーツごと持ち上げられて移されながら、冷たい明るさで輝いている手術灯を歯を食いしばって見つめた。
「気分はどうですか?○○さん」とか「寒くはないですか?○○さん」とか、手術室で待っていた医師達から、必ず最後に名前を付けて繰り返し声をかけられた。
大病院で同時に複数の手術を行う場合は特に、主として患者を取り違えないようにこうするのだが、妙に律儀なところもある?!私は、いちいち「ええ」とか「はい」とか面倒がらずに答えた。
もっとも答えなければ答えるまで聞かれただろうけど・・医師達が大きなマスクで顔を覆ってしまうと、誰が誰やらなかなか見分けがつかなくなるのだが、
「司祭」とおぼしき声がして麻酔の説明を丁寧にしてくれると不思議と心が落ち着いてきた。
これがもしドンキーの声だったなら、その危なっかしい頼りなさに心は波立ったかもしれなかったが!?
例によって横向きになれと言われ、お定まりの「はい エビのように体を曲げてください」が出て、まもなく脊髄注射が打ち込まれた。
頼むから失敗しないでくれよと思う間もなく注射は終わり、麻酔が効くまで時間の経過を待った。

