プラズマ気相反応工学 提井信力 小野茂著 内田老鶴圃 (2000) 238ページ を紹介します。

 

スパッタリングを薄膜形成プロセスとして利用する場合に、そこで生じている現象を理解するには、プラズマについての知識が欠かせません。気相反応の基本である粒子間の弾性および非弾性衝突過程、プラズマの生成と制御、気相空間における粒子反応の重要な計測手段である分光法について、基礎的に分かりやすく解説されています。特に、プラズマの生成と制御の項には、プラズマパラメーターの制御について解説があり、プラズマパラメーターの形成を支配する3つの要素として、入力、気体、装置が挙げられており、これを具体的に検討することはすなわちスパッタでの最適プロセスを構築することに通じますし、定常状態におけるプラズマパラメーターの制御では気体の種類及び流速による制御の項目があり、スパッタでの最適条件を見つけるときに大変参考になるかと思います。最近では、スパッタプロセスにパルスを使うことが多くなっていますが、アフターグロープラズマ中の温度と密度についての項目も大変参考になるかと思います。

 

1.2.1 平均自由工程と衝突周波数 電界の存在しないアフターグロープラズマでは、電子は衝突を繰り返すことによって一方的にエネルギーを失い、電子温度は周囲の中性気体温度まで、急速に低下する。

 

1.2.4 荷電粒子の両極性拡散とその拡散係数 電子が先に拡散すると荷電分離が生じ、ずれた電子とイオンの間に電界が生じる。この電界によって電子は減速されて、逆にイオンが加速されて、両者のバランスがとれたある一定の速さで拡散するようになる。このような拡散を両極性拡散と呼んでいる。

 

1.3 プラズマ粒子の非弾性衝突過程 非弾性衝突反応は、電離や励起をもたらすエネルギー吸収過程、輻射や再結合によるエネルギー放出過程および付着やイオン反応によるエネルギーおよび電荷交換過程の3つにおおよそ分けられる。

 

2.1.2 プラズマパラメーターの形成を支配する3つの要素 

放電入力は、電離や励起のエネルギーを供給するものであるので、生成粒子の密度と温度に直接関係する。一般には、放電電流を増やすほど粒子の密度は高くなる。また、放電電圧は、電子加速に必要な電界を与えるので、その立ち上がりや立下りの速さによって電子のエネルギーが変化し、粒子の電離や励起に影響するようになる。

二番目の要素である気体は、質量と電離エネルギーの違いで電子とのエネルギーのやりとりも異なるので、気体の種類によって電子温度が変化する。したがって適当な割合で混合することによって、電子温度を制御することが出来る。....電子温度が変わると、非弾性衝突による各種プラズマ反応過程も変化する。...気体の種類や混合比を適当に変えることによって、励起や解離など特定の反応を選択的に強化し、結果的には特定のラジカルや励起粒子の種類と密度の生成と制御がある程度できるようになる。

3つめの要素である寸法と形状は、主に電子の損失反応に関係する。円筒型放電管では、気圧と放電電流が一定であれば、管径が小さいほど電子温度は高くなる。これは、管径が小さいほど、管壁への電子の拡散損失が増大するので、一定の放電電流(したがって一定の電子密度)を維持するためには、より高い電子温度が必要となるためである。

 

2.3.1 アフターグロープラズマ中の温度と密度

A パルスアフターグロープラズマ パラメーター制御の観点からいうと、アフターグロープラズマは、高電子密度、低電子温度プラズマを作る極めて良い方法である。、近年、プラズマプロセスでは、生産性の向上と併せて、膜や基板の損傷を減らすなど、いろいろな理由で低温高密度プラズマが必要とされている。高電圧パルス放電によって発生した高密度の電子は、中性粒子との衝突で大量のラジカル種を生成する。パルス電圧が終了したアフターグロー期間では、電子温度は弾性衝突によって急速に低下するが、寿命の長いラジカル種は基板に堆積して良質の膜を形成する。

ネオンやヘリウム、アルゴンなどのような、準安定粒子のできやすい気体では、アフターグロー中で、電子と準安定粒子の衝突による累積電離によって、一旦低下した電子密度が再び上昇することがしばしば観測されている。

 

6.2.1 スペクトルの同定・解析 個々のスペクトルを吟味するには、これまでの研究で集積されたスペクトル表を手元に置き、解析を進めなければならない。そのためには、原子スペクトルについては、H~Uまでのほとんどすべての元素について、1000~2000nmの主なスペクトルの波長とアーク、スパーク、放電(低気圧放電の意味)時の放出光の強度について記述してあるMIT波長(文献1)が信頼できる文献のひとつである。

放電状態によって、各種スペクトル強度が異なる理由は、主に電子衝突励起に関与するプラズマ中の電子の平均エネルギーが異なるためである。...また分子スペクトルについては、"The Identification of Molecular Spectra" (文献2)がある。波長順に種々の分子のバンドヘッドの波長、シェイド(尾を引く方向)、外見の特徴などが記述されている。

 

文献1:"M.I.T. Wave Length Tables" The M.I.T. Press(1969)

文献2:R.W.B. Pearse and A.G.Gaydon, " The Identification of Molecular Spectra" 、Third Edition ,Chapman and Hall Ltd. London(1963)

 

この本の全体の構成について、概略をアーステックホームページに載せてありますので、興味のある方は覗いて見てください。