Effects of water partial pressure on the activated electron beam evaporation process to deposit tin-doped indium-oxide films


Yuzo Shigesato et .al.

J.Vac.Sci. Technol. A 13(2), Mar/Apr 1995


上記論文を読みました。


ユーザーから、真空蒸着、イオンプレーティングにおいて、水分圧の変化により膜質が不安定で、再現性に問題が生じて、困っているという話がありました。


大面積基板にて反応性スパッタを行うときの制御として行われている発光強度を利用した、ガスのフィードバック制御が真空蒸着にも使えないかという検討のため、この論文を参考にしました。



論文概要

・P(H2O)gが大きくなると、化学反応性を抑制することにより、プラズマポテンシャルと基板のフローティングポテンシャルの差による、ボンバード効果が低くなり、膜の内部応力は低下する。


・同時にボンバードメント効果は低くなるので、結晶粒サイズは大きくなる


・P(H2O)が高いと透過率が低くなるのは、ITOの還元が起きている。Sn, Sn3O4..In2O3-x など


・P(H2O)が高いと、薄い数十ナノ厚において、基板温度が150℃以上でも、非晶質になっている。これはP(H2O)が酸化を抑制するために、ガラスと膜の界面での結晶化を遅らせた。


・P(H2O)が高いと、移動度が減少している。これは、酸化が抑制され、結晶化が低いことによるとしているが、結晶粒界面による電子散乱はないと考えられているので、この部分は、疑問がある。


・基板下5mmの場所で、プラズマ発光により、解析した。


・O、Hラジカルは、O2,H2Oと電子衝突により生じる。

・P(H2O)が高くなると、H2O(928nm),H(901nm),Hα(656)が高くなり、逆にAr(812)...およびO(777)...が下がる。


・H2OのH,OHに分解する最少エネルギーは、9.19eVなので、Ar,O,O2の電離エネルギーより低いので優先的にH2Oの分解が生じる。そのために、H2Oが、Ar,O,O2の活性化を抑制する。


・結果として、水分圧が、フィルム特性や構造に影響する


・Arの発光と、Oの発光は相関しているので、Arの発光でOの発光は推定できる。


・酸素の活性と、成膜速度のバランスにより、膜質が影響を受けるので、Oの発光と成膜速度を制御する必要がある。


・Oの発光を見れば、酸化の活性度が分かる。


以上から、

H,O.H2Oなどのの発光強度を測定することにより、水分圧を測定し、水のフィードバックをかければ、水分圧を一定に保ち、膜質の安定のための制御に使えると考えられる。ニコニコ


また、同時にOの発光強度を測り、酸化の活性度を測れば、膜質管理に使えると思われる。ニコニコ


この論文では、ITO膜について行っているが、TiO2,SiO2,Nb2O5膜などの光学膜にも使えると考えられる。ニコニコ


実際に製造現場で行うには、発光強度の測定ヘッド位置、電子銃のパワー、排気速度などの組み合わせを良く検討する必要があると思われる。得意げ


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