金融法務コンプライアンスの専門家@日本橋の行政書士國府です。
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本日は、プロ向け投資運用業(適格投資家向け投資運用業)の登録要件(登録拒否要件)のお話のつづきです。
これまで数回にわたって、プロ向け投資運用業の「人的構成要件」、その中でも特にポイントとなる「運用担当者」や「コンプライアンス担当者(外部委託を含みます)」についてお伝えしてきました。
今回は、プロ向け投資運用業の「人的構成要件」のお話の仕上げです。プロ向け投資運用業を行うための体制整備と必要な要員についてお話をします。
プロ向け投資運用業の登録を考えている会社の役員、担当者の方々は今回も必見の内容ですよ。
それでは、一緒に確認していきましょう!
1.求められる体制整備
プロ向け投資運用業やその他金融商品取引業の登録を受けるにあたっての人的構成の具体的な内容については、金融庁が公表している、「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針(監督指針)」の中で、その審査項目が示されています。
金融当局は、この監督指針(Ⅵ-3-1-2(2)③)の中で、プロ向け投資運用業者に対し、以下の業務に関する体制整備に必要な要員が1名または2名以上確保されていることを求めています。
① 帳簿書類・報告書等の作成、管理
② ディスクロージャー
③ 運用財産の分別管理
④ リスク管理
⑤ 電算システム管理
⑥ 管理部門による運用状況管理、顧客管理
⑦ 法人関係情報管理
⑧ 広告審査
⑨ 顧客情報管理
⑩ 苦情・トラブル処理
⑪ 運用部門による資産運用業務の執行
⑫ 内部監査
⑬ 投資信託財産の運用を行う場合にあっては、投資信託財産に係る計算及びその審査
まず、プロ向け投資運用業者は、投資運用業を行うにあたり、原則として上記①~⑬に掲げる業務について、社内の各部門にて役割分担をしたうえで、適正に行う必要があります。
登録審査の際には、この社内の役割分担が本当に機能するのかどうか厳格に審査が行われます。
なお、これは、一般の投資運用業(適格投資家向け投資運用業に該当しない投資運用業)を行う場合も同様です。
ただし、監督指針では、この「体制整備」について、
「運用の方針、運用財産の額その他適格投資家向け投資運用業の状況に照らして、行おうとする業務の適確な遂行に必要とならないものを除く。」
とあります。
この点について、金融庁が公表している「監督指針の一部改正(案)に対するコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方(以下、簡単に「金融庁パブコメ」といいます)」によりますと、
「行おうとする業務の内容によっては、Ⅵ-3-1-1(1)①ヘaからmまでに掲げる業務(上記①~⑬までに掲げる業務)の全てについて体制を整備しなかったとしても、業務の適確な遂行に支障を来たさない場合も考えられる」
とありますので、
何がなんでも一律全ての体制を整備しなければならないということではなく、自社が行おうとする業務の内容によっては、上記①~⑬のうち体制整備が不要となるものもあり得るということです。
(当然、「投資信託財産の運用」を扱わないのであれば、上記⑬の体制整備は不要です。)
2.体制整備に必要な要員
次に、監督指針の記述では、「プロ向け投資運用業者は、上記①~⑬の業務に関する体制整備に必要な要員を「1名または2名以上」確保しなければならないとあります。
「1名又は2名以上確保されているか」
とありますが、これらの業務担当者は、
必ず2名以上確保しなければならないのでしょうか?
それとも1名確保できれば足りるのでしょうか?
この点について、金融庁パブコメでは、
「適格投資家向け投資運用業者の行おうとする業務の内容に照らして、業務の適確な遂行に支障がないなど、1名でも足りる場合もあるものと考えられます。」
とあります。
ということは、必ず2名以上確保しなければならないということではなく、プロ向け運用業者が行う業務内容に応じて、その業務の遂行に支障を来さないのであれば1名でも適正な人数が確保されていると判断されます。
また、監督指針には、
「法令等の遵守が適切になされるような体制が整備されると認められる場合には、②において確保される人員(=コンプライアンス担当者)と③において確保される人員(上記①~⑬の業務の担当者)が同一人となることを妨げない。」
ともあります。
つまり、コンプライアンス体制が整備されている場合には、コンプライアンス担当者と上記①~⑬の業務担当者との兼職も認められるのです!
例えば、小規模な運用業者の場合は、
④ リスク管理
⑥ 管理部門による運用状況管理、顧客管理
⑦ 法人関係情報管理
⑧ 広告審査
⑨ 顧客情報管理
⑩ 苦情・トラブル処理
といった業務は、コンプライアンス部門(担当者)が担当するのが適当かもしれませんね。
その他に金融庁パブコメでは、
「法令等の遵守が適切になされるような体制を整備していることなどを前提に
・コンプライアンス部門(担当者)と内部監査部門(担当者)が同一人となること
・上記①~⑬の業務を外部委託すること
・コンプライアンス業務の外部委託先と上記①~⑬の業務の外部委託先とが同一となること
について問題ない場合もある」
とあります。
こうなると、この体制整備や必要な要員の確保の問題については、プロ向け投資運用業の登録申請を行う各社の実情に応じて、様々なパターンが考えられますね。
3.まとめ~必要最小限の人員構成の考えてみよう!~
最後に、これまでの人的構成要件のお話の総まとめとしてプロ向け投資運用業の登録を受けるにあたっての必要最小限の人員構成を考えてみましょう!
この点について、金融庁パブコメ(P5、No24)によれば、コンプライアンス業務と上記①~⑬の業務の両方について外部委託すること(両業務の適正な外部委託先が確保できること)を前提に、
・取締役1名、監査役1名
・運用担当者1名
・コンプライアンス及び体制整備担当者1名
(委託先の連絡窓口となる者。なお、具体的業務については全面的に外部委託を行う。)
といった人員構成であっても、その行おうとする業務の内容に照らして、適切に業務を行える体制を備えているのあれば、適格投資家向け投資運用業の登録は可能である旨のコメントがあります。
実際に、この内容・体制で登録を受けることができるかどうかは個別事案となるのでしょうが、理論上、これが現在考えられる最小限の人員構成となるのではないでしょうか?
人員構成や体制整備を行う際の一つの参考モデルにしてみてください!
ご参考にしていただけたでしょうか?
本日はここまでといたします。
アーネスト行政書士事務所
金融法務コンプライアンスの専門家@行政書士國府栄達
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