プロ向け投資運用業の登録要件⑥~コンプライアンス業務の外部委託【後編】~ | 実践!金商法コンプライアンス

実践!金商法コンプライアンス

金融商品取引業に関する法令等・登録申請・社内体制を実践解説!
不動産アセットマネジメント会社、外資系ファンド会社など顧問先多数。
金融商品取引法分野に専門特化した特定行政書士國府栄達がお伝えします。


金融法務コンプライアンスの専門家@日本橋の行政書士國府です。


このブログをお読みいただきありがとうございます!



今回は、前回お伝えしたプロ向け投資運用業(適格投資家向け投資運用業)の登録における「コンプライアンス業務の外部委託」のつづきです。


(前回の記事はこちら


今回は、金融庁が公表している、「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針(監督指針)」ので示された「弁護士等にコンプライアンス業務を委託する場合」の注意点について、一緒に確認していきましょう!


プロ向け投資運用業の登録を考えている会社の役員の方々やご担当者の方は、ぜひ前回の記事とセットで確認してみてくださいね!!




<コンプライアンス業務を外部委託するための条件【後編】>

まず、コンプライアンス業務を委託できる先について、監督指針では、


① 国内外のグループ法人
② 弁護士又は弁護士法人その他これに準ずる者(弁護士等)


が具体的なケースとして挙げられています。


なお、金融庁が公表している「監督指針の一部改正(案)に対するコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方(以下、簡単に「金融庁パブコメ」といいます)」によりますと、上記の①と②の外部委託先について、

----------------------------------------------------------
「国内外のグループ法人」及び「弁護士又は弁護士法人その他これに準ずる者」は、本監督指針を公表する時点において想定する者を限定的に列挙したものです。
----------------------------------------------------------

とコメントがされています。


ここから金融当局は、少なくとも現時点においては、プロ向け投資運用業のコンプライアンス業務の外部委託先としては、原則上記の①か②のケースしか認めない姿勢が読み取れますね。


さて、この外部委託先ですが、「①国内外のグループ法人」はイメージしやすいと思いますので、ここでは「②弁護士又は弁護士法人その他これに準ずる者(弁護士等)」に的を絞ってお話をしたいと思います。



<弁護士又は弁護士法人その他これに準ずる者(弁護士等)>
まず、コンプライアンス業務の外部委託先として想定されている「弁護士等」には、一体どんな能力が求められているのでしょうか?


この点について、前述の監督指針では・・・

----------------------------------------------------------
業務を委託している弁護士等は、金融商品取引業に関し法令等を遵守するために必要な指導等を適正に遂行することができると認められる者であるか。
----------------------------------------------------------


とあります。例えば・・・


○ 法令等遵守の観点から業務実態の把握及び検証ができるか?

○ コンプライアンス・マニュアルの作成することができ、その管理ができるか?

○ コンプライアンス研修を定期的に実施することができるか?

○ コンプライアンスに関する報告書を定期的に作成し、委託者へ提供できるか?

○ 委託者と顧客等との間でトラブルが発生したとき、その対応はできるか?

  
といったようなことに対して、実際に対応できるかどうかが、


「金融商品取引業に関し法令等を遵守するために必要な指導等を適正に遂行することができると認められる者」


に該当するかどうかの一つの判断基準となるのではないでしょうか。


例えば、金融商品取引法を専門とし、証券会社や資産運用会社の顧問弁護士として日々活動されている弁護士や弁護士法人などが、この具体例として考えられます。



<「その他これに準ずる者」の条件>
次に、弁護士や弁護士法人はわかるとしても、「その他これに準ずる者」とは、具体的にどのような者を想定しているのでしょうか?


例えば、次のような者は、ここでいう「その他これに準ずる者」の中に含まれるのでしょうか?


○ 金融商品取引業の登録申請や社内規程の作成などに精通した行政書士

○ 法律を専門とする学者

○ グループ会社の法務部門を担当している者(弁護士資格なし)


この点について、金融庁は、金融庁パブコメの中で次のようにコメントをしています。

----------------------------------------------------------
「弁護士又は弁護士法人その他これに準ずる者」とは、弁護士、弁護士法人又はこれらの者に準ずるような適格投資家向け投資運用業者に対し、書面等の作成に係るものに限らず、コンプライアンス業務を適切に行える能力を有する者を想定しております。
----------------------------------------------------------

前述の行政書士、学者、グループ会社の法務担当者も「コンプライアンス業務を適切に行える能力を有する者」に該当する場合は、コンプライアンス業務を外部委託することが可能です。


しかし、この「コンプライアンス業務を適切に行える能力を有する者」に該当するか否かは、単に資格や申請・ドキュメント作成などの経験があるだけでは足りず、その者の経験した業務内容や業務経験によって判断されることになるかと思います。


例えば、かつて資産運用会社のコンプライアンス部門に所属し、投資運用業者のコンプライアンス業務に従事した後に、現在は証券・金融分野に関する申請手続きや書類作成をメインに取り扱う行政書士などは「その他これに準ずる者」として考えられるかもしれません。



<社内のコンプライアンス担当者の設置は不要?>
さて、ここで一つ素朴な疑問が生じます。

仮に、監督指針で示された条件をクリアーする弁護士等の外部委託先が確保できた場合は、社内の「独立したコンプライアンス部門(担当者)の設置」は不要になるのでしょうか?
 
コンプライアンス業務を全てを外部委託することはできるのでしょうか?

以前の記事で、独立したコンプライアンス部門(担当者)の設置し、要件を満たすコンプライアンス担当者を1名以上確保しなければならないことをお伝えしました。

この要件との関係は果たして・・・?
気になりますよね。


この点について、金融庁は、金融庁パブコメで次のようにコメントしています。

----------------------------------------------------------
当局や当該業者への連絡体制などが構築でき、適切にコンプライアンス業務を行える態勢にあるなど、コンプライアンス業務を全て外部委託することができる場合もあるものと考えられます。
----------------------------------------------------------


結論として、不可能ではないようです。

しかし、「適切にコンプライアンス業務を行える態勢にある」ことが前提であり、「コンプライアンス業務を全て外部委託することができる場合もある」といった表現からも、個人的に現実にこれが認められるケースは限られてくるのではないかと思います。



<外部委託先との委託契約>
さて、最後になりますが、「弁護士等」との間でコンプライアンス業務に関する委託契約を交わす際も注意が必要なんです。

監督指針によると・・・・

----------------------------------------------------------
当該弁護士等との間で締結している委託契約において、次に掲げる事項について規定しているか。
a. 法令等遵守の観点から業務実態の把握及び検証

b. コンプライアンス・マニュアルの作成・管理や、コンプライアンス研修の定期的な実施

c. コンプライアンスに関する報告書の定期的な作成、保管、委託者への提供

d. 委託者と委託先との連絡体制(トラブル発生時の対応を含む。)

e. aからdまでに掲げる事項のほか適格投資家向け投資運用業に係るコンプライアンス業務に必要な事項
----------------------------------------------------------


とありますので、弁護士等と委託契約を締結する際は、上記の対応が可能かどうかについて、事前によく協議し、漏れなく契約書に落とし込むようにしてくださいね!



ご参考にしていただけたでしょうか?
本日はここまでといたします。



アーネスト行政書士事務所
金融法務コンプライアンスの専門家@行政書士國府栄達



金融商品取引業(第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業、投資助言・代理業、投資運用業、適格投資家向け投資運用業)の登録申請、不動産証券化ビジネスに関する金融商品取引法対応、コンプライアンス・マニュアル、社内規程・社内規則の作成、コンプライアンス研修(社内研修)の企画・講師は、金融商品取引法分野に専門特化した行政書士にお任せください!


~お気軽にお問合せください!!~

 
アーネスト行政書士事務所
代表 行政書士 國府 栄達 (こくぶ えいたつ)
〒103-0027
東京都中央区日本橋1丁目2番10号 東洋ビル6階
電話番号:03-4570-0622
Eメール:kokubu@earnest-office.com
 
<公式ホームページ> 
http://www.earnest-office.com

<取扱業務一覧>
http://ameblo.jp/earnestg/entry-11297452111.html

<プロフィール>
http://ameblo.jp/earnestg/entry-11292499026.html

<Facebook>
http://www.facebook.com/earnest.kokubu