残念ながら世紀の駄作、映画「人類資金」 | ブロッコリーな日々

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アイドルマート下花店店長の落書き

『人類資金』の元ネタであるM資金とは、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が占領下の日本で接収した財産などを基に、現在も極秘に運用されていると噂される秘密資金である。

M資金の存在が公的に確認された事は一度もないが、その話を用いた詐欺の手口(M資金詐欺)が存在し、著名な企業や実業家がこの詐欺に遭い、自殺者まで出したことで一般人の間でも有名になっている。

本作は、M資金誕生の秘密を明かすかのような導入部から、次第にその資金が発展途上国に使われることで、国際格差や経済協力、発展途上国をどう救済するかという方向へ話が流れていき、まるで経済ネタのような展開をみせる。

 

投資にまつわる専門的なシーンの連続。加えて尺が不足気味なのか、飛び気味な進行。それでも力技でぐいぐい押しまくる坂元監督の演出では、注意してみないと、観客は置いてきぼりにされそうになってしまう。繰り返し見るか、1回見ただけで納得するためには、原作を読了してから見に行ったほうがいい。

なぜそんな展開になるのかというと、以前『闇の子供たち』で発展途上国の貧困と子供たちの虐待を扱った阪本監督の、子供たちの未来のために世界を変えたいという理想論が強く影響しているものと思う。
 

主人公の真舟と行動を共にする発展途上国・カペラ共和国の代表が国連で演説するシーンは、森山未來の熱演によって大変感動的なシーンではあった。けれども語っている内容とは、資本主義による富の集中を批判し、経済援助よりも人々の真心が発展途上国の救済と発展に繋がるという主張は、ちょっと現実味がなく説経じみて聞こえるのが残念だ。

もちろん資本主義に倫理的な価値を加えていくという改革が求められていることは理解できる。これからの企業にとっても価格とか、宣伝力以上に、世の中に社会貢献しているという企業イメージが商品の重要なファクターになって行く。


今でも、”M資金詐欺”が多数存在する。
古くは、全日空事件、グリーン資金事件、皇室資金事件などである。
これは、旧日本軍の隠し金であったといういまだに囁かれる都市伝説である。

意欲作に違いないが、評価は決して高いものではなかった。
”M資金”を題材に取り上げ、そしてロシア、アメリカ、タイと舞台を変え、現代と1945年を行き来しながら描かれる”M資金”に関わった人々の姿。

作品は、専門用語もあって難しいのもあるが、テンポも鈍く、サスペンスも盛り上がらない。
何より、登場人物たちの行動や思惑や意志みたいなものも伝わってこないのである。


せっかくの豪華キャストも、M資金さながら、宝の持ち腐れなのだ。
独特の存在感と流暢な英語を披露した森山未來の熱演が光っただけ。


残念ながら、この作品を奨める勇気がない。