「大貧民ゲーム」から資本主義を体験する | ブロッコリーな日々

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アイドルマート下花店店長の落書き

「大貧民ゲーム」から資本主義を体験する

大貧民ゲームは、資本主義の本質を戯画化したトランプ遊びだ。

知らない人はいないだろうが、おさらいしておきたい。

 

このゲームは、すぐにはプレーが始まらない。カードを配り終わると、大貧民の地位にいる人は、自分の手持ちカードのなかで、最強のカード2枚を大富豪に渡さなければならない。この行為を納税という。大富豪の人は、お返しとして、不要なカード2枚をくれてやるのだ。

 

つまり、ゲームを開始する時点で大貧民と大富豪には、圧倒的な格差が生じている。客観的に見れば、平等なのはカード枚数だけなのだ。大富豪は、ますます富み栄える。この格差こそ資本主義の縮図と云える。

 

これで何が面白いのか、と遊んだ経験のない人は、怪訝に思うかもしれない。だが、面白いのだ、これが。徹夜をすることもよくある。このゲームでは、1番弱いカードは「3」そして、数字が大きくなるにつれて、カードは強くなる。1番大きい数字である13(キング)の次は1に戻り、2が普通のカードの中では最強というルールだ。「2」を上回る最強のカードはジョーカーである。最強のカードとしても使えるし、他のカードの代用として使えるというオールマイティーな強みもある。

 

最初はじゃんけんやくじなどで、最初にカードを出す人を決める。時計回り、逆時計回りなど順番を決めておいて、次の人がカードを出す。前の人のカードより強いものがないときや、今は出したくないときに、パスをする。誰もカードを出せなくなったら、最後にカードを出した人(1番強いカードを出した人)の勝ちとなる。人数にもよるが、1番最初にあがった人が「大富豪」その次が「富豪」その次が「平民」「貧民」「大貧民」とランク付けしていく。

 

このゲームは、カード単体の強さだけで勝敗が決まるのではない。カードは1枚だけでなく、複数枚のセットで出すことができるのだ。そして、前のカードが1枚なら1枚ずつ、2枚で出されたら2枚ずつ、と前の人のカードの組み合わせと同じ状態でカードを出さなくてはならない。

 

ところが、同じマークのカードが4枚そろうと「革命」が起こせるのだ。革命を起こすと、今までの階級が逆になり、2が1番弱くて3が1番強い世界になる。大富豪になったとき、調子に乗って1番弱い3を2枚大貧民にあげたりすると、そこで3が4枚揃う確率が高くなり、ときおり「革命」を起こされることもあるのだ。ペアや手札に恵まれているときは、全体の数字が低くても勝てる場合がある。他の人が持っていないセットのパターンを自分のターンで展開し続けて、最初のターンを独占すれば、一気に勝利に近づけるのだ。

 

1980年代のバブル、己の欲望を徹底的におさえ、途中で冷静になれた人だけが、最後の勝者になれたのだ。このゲームのポイントは、配られた手札の中で、常に最善の戦略を練り、決して投げやりにならない人だけが、富裕層の常連になっていくのである。同じルールのなかで戦っているのに、富裕層と貧民層に固まってしまうのは、現実社会でも見られる資本主義の現象そのものである。

 

大貧民ゲームを続けると、他人の懐具合を読み、出方や考え方を読み取る技術が知らず知らずのうちに磨かれる。さらに、株式市場において仕手筋の動きが存在するのも理解できるようになる。

 

こんな素晴らしいゲームがあるのに、金融教育に導入しない手はないだろう。