宅間守「池田小学校児童襲撃事件」の悪夢 | ブロッコリーな日々

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アイドルマート下花店店長の落書き

大阪で起きた「池田小学校児童襲撃事件」をご記憶だろうか。

私は、当時大阪で建設資材の営業職にあった。事件後、この池田小学校の建て替えが決まり、よく現場に打ち合わせのために出向いた。

 

そのためもあって、この事件報道はよく見ていた。宅間守はほどなく死刑執行されたが、近年彼の精神面での人となりの研究が進んでいた。鑑定医であった岡江は次のように述べている。

私たち鑑定人は、とりあえず、こだわり、猜疑心、視線への敏感さを精神症状という項目のなかで検討しようとしている。しかし鑑定に取りかかった最初からその最後まで、逡巡し議論を重ねたのは、宅間守の示す精神症状は、私たちが日常臨床で経験したどの症例にも該当しないあまれるいは類似点もないほど、極めて稀であったからである。

 

ただし、現在、自閉症スペクトラム障害について十分な知識がある者がこの鑑定書を読めば、宅間守には自閉症スペクトラム障害である可能性が高いという結論を持つはずである。

 

宅間守には、自閉症スペクトラム障害の典型的な症候が多く確認できるという。自閉症スペクトラム障害を抜きにして宅間の診断や行動の説明をすることは困難であるほど、明確に自閉性を確認できるはずである。

 

鑑定医である岡江たちが「日常臨床で経験したどの症例にも該当しない」と述べているのは、当時は自閉症スペクトラム障害(広汎性発達障害)の診断や特性がまだまだ精神科医たちに知られていなかったためではないかと思われる。

 

彼の鑑定書の中から自閉性が読み取れる記述を抜き出してみる。

この記事の位置づけは鑑定医の岡江が採取した症候・情報・治療反応性などを再解釈という方法なので二次資料を基にしたものであること、成人の段階で自閉症スペクトラム障害の診断はできないことなどから信頼性は高いものではない。自閉症スペクトラム障害の診断は3~4歳の時の観察がないと正式には診断できない。

 

彼は、小学校襲撃以前にも強姦、恐喝などいくつかの犯罪を犯している。鑑定医の岡江は、強姦に関して宅間を下記のように評価している。

 

宅問守は、自分では、女性とまともな交際はできないと感じている。一緒に映画を見に行っても、全く楽しくなかった。つまり女性は性欲を満たす手段であって、情緒的交流は持てないのである。強姦についても、嫌がっているのは上辺だけで、本当に女性がダメージをうけていることは理解できない。金にしようと告訴する女性がいるだけだと思っている。

 

強姦だけでなく、ときにみられた残虐に性器などを傷つける行為に対しても何らの反省や後悔もない。女性との間での情緒的な交流は持つことができず、さらに同情心や共感性も全くない。

箇条書きにまとめると次のようになる。

  • 情緒的交流が困難
  • 強姦で女性が嫌がっているのは上辺だけで女性が精神的ダメージを受けていることは理解できない
  • 強姦事件は金にしようと告訴する女性がいるだけ
  • 残虐に性器などを傷つける行為に対しても何らの反省や後悔もない
  • 同情心や共感性も全くない

情緒的交流が困難・他者理解ができない・共感性がないといった点は、自閉性そのものである。この特徴だけでも、宅間を自閉症スペクトラム障害の疑いを持つには十分である。

 

他者と自己の理解が関係する犯罪は1)サイコパス、2)ADHD+反抗挑戦症、3)自閉症、4)サディズムの4つに区別すると理解しやすい。

 

サイコパスは人の痛みをわかるが、それによって自身の感情が動かないという点が特徴的である。

従って行動が冷淡さを伴うことがあるのである。学術的にはCallous and unemotional traits(CU)と呼ばれているパーソナリティ傾向である。サディズムは人の痛みがわかり、感情も動くが、人の痛みが自身の快感になるなどの異常性がある。

おして宅間守の場合は人の痛みがわからない、ということなので、CUではなく、自閉性(autistic)である。

その原因となっているのは他者理解・共感性の欠如である。共感性が低い場合には、相手の女性が精神的ダメージを負うといったことが理解できない。女性側の心がわからず、性欲にまかせて強姦することになる。

 

彼が育った阪神工業地帯は、文字通りわが国の産業を牽引していたが、そのせいで河川や各家庭の井戸水は、有毒化学物質で汚染されていた。生まれつき宅間守の脳が欠損していたのは、偶然ではない。公害と大いに関連があるのだろう。

 

死刑執行の日、自分で希望していたとはいえ、二人の刑務官に身体をささえられてようやく刑場迄たどり着いたという。

恐怖からは逃れられなかったのだろう。気の毒な男だと思う。