暴走した「かぼちゃの馬車」スルガ銀行の罪と罰 | ブロッコリーな日々

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アイドルマート下花店店長の落書き

「かぼちゃの馬車」が暴走し、ひき逃げされた会社員投資家の悲惨。

サブリースとは、不動産会社が不動産のオーナーに対して、毎月の家賃を保証する制度だ。

賃貸物件を持つオーナーから不動産会社が一括で部屋を借り上げ、入居者を探して又貸しすることで、毎月の家賃を保証するというもの。オーナーは自らが入居者探しをする必要がなく、空室リスクがない上、賃貸物件の運営・管理も行わなくて済む。

 

このサブリースを使い、女性向けシェアハウスを「かぼちゃの馬車」というブランド名で積極的に展開したのが、不動産会社「スマートデイズ」だった。

2015年に「30年間家賃保証」を謳ってスタートした「かぼちゃの馬車」は、年8%以上の利回りを保証していた。

上手くいけば、それこそうまい副業だと云える。株式投資のようなセンスも不要だ。

 

だが、濡れ手に粟ではなかった。その「かぼちゃの馬車」は、いきなり暴走するのであった。

売り出した業者も資金を貸し付けたスルガ銀行にも制御できなくなっていた。

 

投資はどの案件でもそうだが、当初は順調だった「かぼちゃの馬車」だが、次第に入居率に陰りが見え始め、50%に満たない物件が増加し始めるのだ。そして、2017年11月にはオーナーに支払うサブリース賃料の減額が行われ、ついに2018年1月には賃料の支払いが停止したことで、問題が表面化した。スマートデイズは、最盛期には都内で800棟のシェアハウスを運営・管理していた。

 

しかし、この問題はその後“予想外”の展開を見せる。「かぼちゃの馬車」の賃貸物件のオーナーに、スルガ銀行からの融資を受けて物件を購入したオーナーが多数いることが判明したのである。スマートデイズがオーナーにスルガ銀行からの融資を斡旋していたことも明らかになり、スルガ銀行とスマートデイズの“深い関係”が徐々に明らかになった。

 

さらに、スルガ銀行が借り入れ希望者の源泉徴収票や預金残高を改竄したり、契約書を偽造したりする不正融資が横行していたことも判明する。実勢価格より高値で物件を買わされるなど悪質なケースもあり、返済に行き詰まるオーナーが相次いだ。ほとんどの投資家は、悪徳業者とつるんでいたスルガ銀行に騙されていたのである。

 

2018年2月には、オーナー247名から委任を受けた被害弁護団が発足、2019年9月11日に、被害弁護団はスルガ銀行に早期解決を求める調停を東京地裁に申し立てた。同年11月5日、東京地裁から解決への勧告が行われ、スルガ銀行と被害弁護団を中心に解決方法の検討が進められていた。

 

そして2020年3月25日、スルガ銀行と被害弁護団は解決方法で合意に至った。その解決方法とは、不動産購入向けの融資と不動産を「相殺」するというもの。つまり、土地と建物の物納を条件に、借金を帳消しにするのだ。

 

具体的には、スルガ銀行はシェアハウスのオーナーに対する貸出債権を第三者(投資ファンドなど)に売却する。シェアハウスのオーナーは、この第三者にシェアハウスの土地と建物を物納することで借入債務を解消する。

 

実勢価格より高値で物件を取得したオーナーの場合、土地と建物の物納による代物弁済では土地と建物の実勢価格と返済すべき借入金に差額(不足分)が発生するが、この差額はスルガ銀が「解決金」として賠償する。

これにより、オーナーは借金の返済を免れることができる。対象は東京地裁に民事調停を申し立てていたオーナー257名で、物件数は343棟。ローン残高は約440億円となる。

 

スルガ銀行との合意後、被害者弁護団は、「被害者オーナーが不正融資による債務から解放されることになる」との声明を発表、都内で記者会見した河合弘之弁護団長は「金融史上初の完全救済を勝ち取った」と述べた。記者会見に同席したオーナーの1人は、「つらくて苦しい時間から解放され、ほっとしている」と安堵の表情を浮かべた。

 

スルガ銀行は2018年9月7日、創業家の岡野光喜会長兼CEOなど、山明広社長ら役員5名が引責辞任。同10月5日には、金融庁から不動産投資向けの新規融資を6カ月間禁じる一部業務停止命令を受け、同11月30日に金融庁に提出した業務改善計画では、「創業家本位の企業風土を抜本的に改めることが改革の前提条件」と明記し、創業家と訣別したという。

 

その上で、東京地裁から「不法行為に基づく損害賠償義務が生じる」と認定され、調停勧告に応じることで、この問題に対する “禊” を済ませたということだろう。なにやら腑に落ちないが、救済はどうにかされたようだ。