「人間失格」の誕生秘話---太宰治の人間不信 | ブロッコリーな日々

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アイドルマート下花店店長の落書き

「人間失格」の誕生秘話

---太宰治の人間不信

2019年製作/日本
配給:松竹、アスミック・エース

監督:蜷川実花

出演:小栗旬、宮沢りえ、沢尻エリカ

 

小栗旬が文豪・太宰治を演じ、小説「人間失格」の誕生秘話を、太宰を取り巻く3人の女性たちとの関係とともに描いたオリジナル作品。

「ヘルタースケルター」「Diner ダイナー」の蜷川実花がメガホンをとり、脚本を「紙の月」の早船歌江子が手がけた。

1946年に太宰治は妻子がありながら、自身に好意を寄せてくれていた太田静子と不倫関係になり、下曾我にある彼女の自宅にまで赴いてしまう。

太宰は手紙のやり取りなどから、彼女の文学的な才能を見出しており、彼女が密かに書いていたという日記に興味を持つ。

そして下曾我を訪れた際に、その日記を読み、彼女に共にこの日記と自分たちの物語を『斜陽』という作品にして世に送り出そうと提案する

 

その一方で、彼は『ヴィヨンの妻』などの作品を執筆し、確実に文壇での存在感を強めていく。

しかし、太田静子との間に子供ができてしまうという不測の事態が起こる。

かくして、『斜陽』という作品は太宰治の作品として世に送り出されることとなる。

また、彼は自分の執筆には欠かせない人物だったとして静子に敬意を払い、不倫関係の最中にできた子供を認知し、名前をつけ、そして養育費を支払うことにも同意する。

『斜陽』は若い世代にも受け、爆発的なヒットを記録するが、文壇からは高い評価を得ることができなかった。

そこで太宰は自分自身の物語でかつ「傑作」を書かなければならないと思い至り、かねてより構想していた『人間失格』という作品を完成させようと執筆を始める。

 

しかし、彼はたばこと酒と荒んだ生活のために、患っていた結核を急激に悪化させており、余命が残りわずかであることを告げられていた。

そんな時に、彼の前に現れたのが、山崎富栄という女性だった。

彼女は、献身的に太宰の執筆を支えるのだったが、強く死の臭いがする女性でもあった。。

 

本作で主人公の太宰治を演じた小栗旬は、太宰治が憑依したかのような演技を見せていた。

表情やちょっとした動作に至るまで何かに憑かれたかのように狂っていて、それでいて女性に対する純粋なまなざしだけは健在である。

店長は、存在感を発揮した本作の小栗旬を再評価した。

 

見逃した人には激しくおススメ。太宰治入門として観る価値もある。