私は、フセインの息子「ウダイ」---影武者だった「ラティフ・ヤヒア」の憂鬱 | ブロッコリーな日々

ブロッコリーな日々

アイドルマート下花店店長の落書き

私は、サダム・フセインの息子「ウダイ」だ

---影武者だった「ラティフ・ヤヒア」の憂鬱

2011年製作/ベルギー
原題:The Devil's Double
配給:ギャガ

監督:リー・タマホリ

主演:ドミニク・クーパー

 

ウダイに顔が似ているという理由から、家族の命と引き換えにウダイの影武者になることを強制されたラティフ。

自ら生死を選べる自由もなく、絶対的な権力と莫大な資産、そして狂気に満ちたウダイに寄り添い続けるラティフ。

彼は、恐ろしい現実を次々と目の当たりにしていく。

サダム・フセインの長男ウダイ(ドミニク・クーパー)は、圧倒的な権力をバックにやりたい放題のドラ息子として知られていた。

町で美人学生を見つければ拉致して暴行、そのまま通りに捨てていくなどサディスティックな異常性質で恐れられる彼は、あるとき同級生のラティフ(ドミニク・クーパー:二役)を呼び出す。

 

背格好が似ているラティフが予想以上に自分に似た風貌に成長しているのを見て上機嫌なウダイは、「微調整」を施した末に自分の影武者にならないかと持ちかける。

 

ウダイから影武者にならないか?と、頼まれる。もちろん独裁者の息子からの要請である。彼には断る選択肢などないのだ。

ラティフはイラクでは中流以上の裕福な家庭の息子でウダイとは旧友でもある。

 

サダムの息子としての彼の前では無力だった。

そこから、想像を絶する強制的な就職、影武者生活が開始される。

 

世界史上に残る独裁者の息子の生活は、あらゆる意味で破天荒だった。

ウダイは異常なほど絶倫で、女に目がないのだ。この影武者になったのだから悲劇である。

ハンサムで人当たりは最高、笑顔もさわやかだが、ひとたび怒らせたらとんでもないことになる。

父親のサダム・フセインが人格者に見えるほどに、とにかく異常精神のだ。

そんな男と暮らすスリリングな日常を、観客は疑似体験できる。

 

この映画は本物のラティフ自身の体験記の映画化であり、彼自身も脚本その他に深くかかわっている。

エピソードの数々は、そこそこ残酷な描写も交えながら紹介されるが、女関連以外はそれほどショッキングな異常性を感じない。

寵愛を受ける女の役でフランス出身のリュディヴィーヌ・サニエが何度か濡れ場を披露するが、相変わらずその手の演技が抜群にうまい。

決してナイスバディとか美人というわけではないが、たいていの男はハマるだろうなと思わせる色気がある。

 

ベルギー映画ということで、期待するほどの政治的メッセージはない。

これがハリウッド映画であれば、また一味違った作品に仕上がった、その点が少々惜しい気がする。