ただ、一日中ずっと二人一緒というわけにはいかない。一応、高知にいる元同僚に会いに行くことが目的なのだ。でも、最終的に二人きりになれるように計画してるので、それはそれでまた楽しみなものであった。
早朝、車で彼女の自宅近くまで彼女を迎えに行った。現れた彼女の姿はいつも職場で見ている姿とは全く違っていて、とても若々しかった。ズボンでもスカートでもなく、足が丸見えの短パン姿。そりゃそうだ。まだ20代前半の子だ。自分はポロシャツに膝までの短パンに、最近彼女と買いに言ったサンダル。涼しい格好だがいかにもおっさんくさい姿だったろう。彼女と二人で歩いたら、おそらくとても不釣合いだろう。私はそんな彼女の姿に見とれてしまい、運転中はスケベ心丸出しで彼女の足を何度か触ってしまうほどだった。
高知までは、瀬戸大橋を使えばあっという間に現地へ到着してしまうので、なるべく二人の時間を長くしたいということと、海を身近に感じたいということで、岡山県の港からフェリーで香川入りし、そこから高速を使うことにした。フェリーではほとんど船内で過ごすことなく、日の降り注ぐ甲板上に出てずっと二人で海を眺めていた。暑いのにずっとべったりくっ付いた状態で・・・。
フェリーを降りると高速に入り、そのまま一気に高知へ向かった。車の中ではもうすぐ離さなければならないお互いの手を惜しむかのように終始二人は握り合っていた。
現地の元同僚とは高知駅で合流した。彼が車に乗り込むと、彼女は後ろの席へ移動した。ここでしばらく彼女との二人きりの時間はお預けとなる。時間はすでに昼の1時を過ぎていたので、とりあえずランチタイムをとることになった。
彼は非常に頭の切れる人間だった。私はそんな彼を以前から一目置いていたのだ。彼女も同じ思いだ。
私が今の職場に配属される前から彼と彼女は一緒に働いていた。彼らは普段から仲がよく、彼女が酒に酔いつぶれた時はいつも彼が快方していたことから、以前から二人の関係を怪しむ声もあったことを私は承知していた。私も彼女との関係を持つようになるまでは、彼女は彼が好きなんだろうと思い込んでいた。実際は特にそんな特別な関係はなかったのだが・・・。彼と久しぶりに再会して、そんな彼らの間に今自分が居ると思うと、なんだか不思議な気持ちになった。
そんな優秀な彼は生粋の高知人であり、非常におもてなしの上手な人間だった。その日の日程は彼に一任してある。計画性のない私にとっては、この旅は楽チンそのものだったが、彼の手際のよさに彼女が関心しているのを見て私は少しばかりヤキモチを妬いてしまった。今迄の彼女とのデートではほとんど計画性のないものばかりだったのだ。事実、太平洋が一望できる海辺のレストランに案内されて、ただただ私も関心するばかりだった。昼食後も、龍河洞という高知の観光名所に案内してもらい、彼女も大喜びだった。
車での移動中、我々は一緒に仕事をしていた頃の思い出話や彼と付き合っている彼女のこと、私の家庭の事、私の関東出張の話題、世間話等で盛り上がった。ただ、時折ルームミラー越しに彼女を除いてみると、寂しそうに車外の景色を黙って見つめる姿があった。心配して後席に座っている彼女に問いかけると、ただ「別に大丈夫ですよ?」という返事しか返ってこなかった。
その寂しそうな表情の原因については、夜になって彼と別れてから判明することとなる。
夕方になって、宴会をする前に私と彼女は車をホテルに預けてチェックインするためにいったん彼と別れた。彼は一足先に宴会場所に入っておくとのこと。因みに彼が、私と彼女が同じホテルに宿泊することを怪しんでいたのかどうかは定かではないが、例え怪しんでいても聞くに聞けなかっただろう。まず、私のような堅物な人間、ましてや彼女のような純粋な子が不倫などするはずがないと思っていたのだと思う。
今回のお互いの部屋は隣同士。行き来するのも特に問題のない距離だった。さすが、東京や京都と比較すると、高知のホテルは驚くほど格安だった。それにしても結構設備が整っていることに驚いた。
ホテルを出た我々は、彼が予約した店へ向かう。再び訪れた二人きりの時間ということもあり、時間が許すまでは二人手を繋いで現地まで向かった。
今日は彼と時間をともにするのは夜9時まで。それ以降は彼女との時間。これから酒を飲むことになるが、彼女と一緒に過ごすには深酒は禁物だ。しかし、せっかくもてなしてくれた彼のために、今日はしっかり酒を酌み交わさなければならないとも思った。果たして無事、彼女と夜を過ごせるのか。
そんなことが心配になった私は、繋いでいる彼女の手を、より強く握りしめた。
彼女は一瞬、怪訝そうな顔をした。