アルファロメオ 159 2.2 セレスピード、前回からのつづき。
ギアが入らないのは、クラッチが切れていないことが原因なのでトランスミッションを取外した。
クラッチカバーを点検する。ダイアフラムスプリングの破損や磨耗も、みたところ異常はない。

クラッチディスクは磨耗しているが、これが原因ではないだろう。

トランスミッションのベルハウジング内に、少しだがフルード漏れの跡があった。レリーズベアリングからの漏れのようだが、それにしては、量が少ないような...。レリーズベアリングを取外し圧縮エアで圧をかけてみると、シール部分からシューシューと音が聞こえる。やはりレリーズベアリングの不具合のようだ。

ここでふと気づいたのだが、レリーズベアリングの油圧配管を切離したのにクラッチフルードのタンクはまだフルードが入ったままだ。というか、切離した配管からフルードが出てこない。フルードタンクにSSTを使って圧縮エアで圧をかけると、フルードが少し出てくるが、圧を抜くと止まってしまう。レリーズシリンダも、何かおかしい。また、セレスピードタンク周辺のオイル汚れも気になる。
今までの経過を報告しがてら、なにか情報が入らないかとオーナーさんに電話をかけてみた。
イーグルオート 「・・・というわけで、ギアが入らないのはセレスピードの故障ではなく、クラッチが原因です。」
オーナーさん 「そうですか...。セレスピードのオイルは少し前に自分で変えたよ。」
イ 「えっ...。」
オ 「シリンジでオイルを抜きとってから入れたのだけど、狭いのでこぼれちゃって...。」
イ 「大きいタンク(セレスピード用)と小さいタンク(クラッチ用)のどちらを変えました?」
オ 「大きいほう。」
イ 「オイルは何を使いました?」
オ 「CS Speed (セレスピード用純正オイル)。」
イ 「シリンジで大きいタンクのオイルを抜きとって交換したんですね。」
オ 「そう。」
イ 「トランスミッションがオイルまみれなのは、その時にオイルをこぼしたからなんですね。」
オ 「狭いし、暗い時にやったんで...。」
イ 「それで大きいほうだけ変えて、小さいほうは変えなかったんですね。」
オ 「いや、小さいほうも変えた。」
イ 「使ったのは同じオイル?」
オ 「同じオイル。」
これで解った。クラッチ系統はブレーキフルードを使用しているので、シールもグリコール系作動油用のものが使われている。ここに鉱物油系のオイルを入れたので、シールがダメになってしまった。レリーズシリンダを分解してみると、カップシールが膨潤してブヨブヨになっている。これではシールの役目をはたさない。また、シールが膨らんだ分シリンダ内の経路をふさいでしまい、タンク内のフルードが出てこなかったようだ。

最初にクラッチフルードレベルを点検した時の違和感も解った。違和感はタンク内ではなくキャップのほうで、キャップのインナシールがやはり同じように膨潤していた。インナシールを取外すとキャップより大きくなっており、元には戻せなくなった。

このオーナーさんは、自分で車に手をいれるのが好きなようで、エンジンルームやフューズボックスに何かわからない箱を取り付けたり、手製のアーシングケーブルを付けたりしていた。自分の車を触るのは悪いことではないが、構造も理解しないで行うと、このような事になる。クラッチは消耗部品なのでいいとして、レリーズシリンダやレリーズベアリングまでの配管等、油圧系の部品まで交換が必要となった。
全てを組付け後、テスタでセレスピードのキャリブレーション、キスポイント学習をして修理完了です。