うつ病の診断から、数年が経っていた。 

 

薬を飲んでいた。

通院もしていた。

でも何かが合わない感覚がずっとあった。

 

調子がいい時期と、全く動けない時期が、波のように繰り返していた。 

 

「なんで治らないんだろう」と思っていた。 

正確には、「なんで自分はこんなにコントロールできないんだろう」だった。 

 

あるとき医者に言われた。 

 

「双極性障害ですね」

 

 最初、ピンとこなかった。

 

 躁うつ病、という言葉は聞いたことがあった。
でも自分がそれだとは思っていなかった。

 

躁状態、という言葉を聞いて、「そんな大げさな」と感じた記憶がある。 

ところが説明を聞くうちに、引っかかり始めた。 

 

眠れない夜に活発になること。

衝動的に動いてしまうこと。

そのあとに来る、深い落ち込み。

 

「テンションが高かっただけ」と思っていた時期が、躁状態と呼ばれるものと一致していた。 

 

診断が確定したとき、二つの気持ちが同時に来た。 

 

ひとつは、納得。 

もうひとつは、恐怖。 

 

納得は、わかりやすい。

長年の「なぜ」に、やっと名前がついた。

コントロールできなかったのは、意志が弱いからじゃなかった。

病気の波だった。 

 

恐怖は、説明しにくい。 

「一生、この波と生きていくのか」という感覚だった。

治るものじゃない、と医者に言われた言葉が、しばらく頭から離れなかった。 

 

今は、少し違う景色が見えている。 

名前がついたことで、波のパターンが観察できるようになった。

 

「調子がいい」はそのまま信じない。

「落ちてきた」は波だと思えるようになった。 

診断は、ゴールじゃない。

でも地図の始まりだった。 

 

壊れたまま生きるために、まず自分の地形を知ること。

双極性障害という診断は、そのための最初の一歩だったと、

今は思っている。 

 

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