新聞記者をやっていた。
文章を書くのが好きだった。
取材して、考えて、言葉にする。それが仕事だった。
でも7年続けて、ある事実に気がついた。
新聞は、全部本当のことを書けるわけではない。
嘘、とまでは言えない。
でも「本当のことを書けない」場面が、繰り返しあった。
業界の慣習。大人の事情。
「ここは書かないでおこう」という暗黙の了解。
最初は「仕事だから仕方ない」と思っていた。
でも積み重なるうちに、耐えられなくなっていった。
後から知ったのだが、これは発達障害の特性だった。
「融通の利かない正義感」と呼ばれる。
白か黒かで判断する。
グレーゾーンに長くいられない。
建前と本音の乖離に、人より何倍も消耗する。
当時はそんなこと知らなかった。
ただ、しんどかった。
毎朝、少しずつ何かが削れていくような感覚があった。
7年目に、辞めた。
記者を辞める理由はいくつかあった。
でも一番深いところにあったのは、これだった。
本当のことを書けない場所で、これ以上書き続けることができなかった。
辞めてから、いろんな仕事を試した。
保険の外交員、不動産会社の事務。
どれも長続きしなかった。
うつ病にもなった。
それでも記者を辞めたことを、後悔したことは一度もない。
今、Kindleを書いている。
誰にも「ここは書くな」と言われない。
自分が経験した本当のことだけを書く。
あの7年間が、今の書き方を作ったのだと思っている。
本音と建前の間で削れ続けた記者時代があったから、本音だけで書く今が、自分には合っている。
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