『リバイバル・サバイバルファミリー』
――「お電気ちょうだい!」――
1.発端――すべては「お電気ちょうだい!」から
現代社会を見渡すと、AIも、コンピューターも、通信も、工場も、交通も、ほとんど何もかもが電気を欲しがっている。
AIも、
「お電気ちょうだい!」
核融合発電も、
「お電気ちょうだい!」
水素を作るにも、鉄を作るにも、アルミを作るにも、廃プラスチックを再生するにも、結局は大量の電気が必要になる。
水を電気分解して水素を作る。
水素で鉄鉱石を還元する。
アルミを電解精錬する。
空気中の窒素から肥料を作る。
廃プラスチックを熱分解して化学原料に戻す。
ゴミの埋立地を掘り返し、そこに眠る鉄、アルミ、銅、貴金属、レアメタルを回収する。
つまり、未来の文明は、
「捨てる文明」から「電気を使って循環させる文明」
へ向かう可能性がある。
そして、その大量の電気を供給するものとして、核融合発電が期待される。
MITとの関係が深い核融合ベンチャー、Commonwealth Fusion Systems(CFS)。
CFSが本当に商用発電に成功すれば、
一号機 → 資金 → 量産 → 二号機、三号機…… → 大量の電力
という流れが生まれるかもしれない。
そこでまた、
「お電気ちょうだい!」
である。
2.電気がなくなったら――『サバイバルファミリー』
映画『サバイバルファミリー』では、世界から電気が失われ、現代文明が大混乱に陥る。
一家は自転車で東京から西へ向かい、東名・名神・中国道を走る。
しかし、そこで「電気がない世界」を物理的に考え始めると、いろいろ面白い疑問が出てくる。
現代の自動車は、ガソリンを燃料にしていても、バッテリー、燃料ポンプ、電子制御、点火系など、電気に大きく依存している。
しかし昔の単純なガソリンエンジンなら、マグネトーなどによってバッテリーなしでも点火できるものがあった。
ディーゼルエンジンは、そもそもガソリンエンジンのような火花点火を必要としない。
空気を強く圧縮して高温にし、そこへ燃料を噴射して自己着火させる。
そして蒸気機関車は、さらに単純だ。
石炭 → 火 → 蒸気 → 機械 → 車輪
電気がなくても動かせる。
そう考えると、
「東京から九州へ帰るなら、ディーゼル船はどうなんだ?」
という疑問も出てくる。
もちろん現代の船も、航海計器、通信、操舵、燃料設備などに電気を使う。しかし船には自家発電設備がある。
つまり、電力網が止まっても、すべての機械が一斉に死ぬわけではない。
――という具合に、一本の映画を見ながら、物理学的なツッコミが止まらなくなる。
3.「お電気ちょうだい!」は、実は人類史そのもの
そもそも、人類が最初に利用した大きなエネルギーの一つは「火」だった。
雷。
落雷。
山火事。
そこから人類は火を得て、それを守った。
火によって、
食べ物を調理し、
暖を取り、
夜を照らし、
外敵から身を守り、
やがて金属を加工し、
文明を発展させた。
つまり、
雷 → 火 → 文明
という長い物語がある。
そして文明は、
火 → 蒸気 → 機械 → 発電 → 電気
へと進んできた。
現代では、電気が文明の隅々まで入り込んでいる。
さらに面白いことに、人間自身も電気を使っている。
心臓は電気的な刺激によって拍動する。
神経は電気的な信号を伝える。
筋肉は電気的な刺激によって収縮する。
脳も、神経細胞の電気的活動によって働いている。
つまり、
心臓も、お電気。
神経も、お電気。
筋肉も、お電気。
脳も、お電気。
文明だけではない。
生命そのものにも電気が関わっている。
4.『リバイバル・サバイバルファミリー』のラスト
映画の最後。
長い旅の末、家族はようやく小さな発電機を動かす。
電灯が一つ、また一つと点灯する。
「お電気、ついた!」
そして画面は、現代の都市から、人体の内部へ。
心臓。
神経。
筋肉。
脳。
電気信号が走っていく。
ナレーション。
「心臓も、お電気。」
「神経も、お電気。」
「筋肉も、お電気。」
「脳も、お電気。」
一拍。
完全な無音。
そして――
お電気ちょうだい!
【最大テロップ】
暗転。
しばらく何もない。
そして、
場内明転。
エンド。
説明も、後日談も、余計なオチもない。
観客は明るくなった場内で、
「……結局、全部お電気かよ」
と笑いながら席を立つ。
5.この映画の「お電気ちょうだい!」
「お電気ちょうだい!」は単なるギャグではない。
原始人が雷から得た火を守ったこと。
人類が火を使って文明を作ったこと。
蒸気を使い、機械を動かし、電気を作ったこと。
現代文明が電気なしでは動かなくなったこと。
AIまで電気を大量に必要とするようになったこと。
そして、人間自身も電気によって生きていること。
それらを全部、一言でつなぐ言葉である。
「お電気ちょうだい!」
原始人からAIまで。
焚き火から核融合まで。
そして最後には、
人間そのものまで。
――お電気ちょうだい!


