【市況】【井上哲男のストラテジー・アイ】 SQ通過後の市場に期待
Text.井上哲男(MCPアセット・マネジメント証券 チーフ・ストラテジスト
5月23日にいきなり日経平均が1143円という記録的な下げを記録し、それまでの上昇スピードが速かった分、他国の市場に比べて日本市場はその後も大きな下落に見舞われた。
5月22日~6月5日の各国の株式市場の下落率を計測してみると、欧州市場全体の株式の値動きを表すストックス600がほぼ5%、米国市場全体の値動きを示すS&P500が3.6%の下落でとどまっている一方、日経平均の下落率は16.7%と非常に大きい。
急落の予兆があったのが、5月23日前夜の米国市場。米国夏時間であれば日本の午前5時に引けるシカゴ市場の日経平均先物の終値を気にしている人は多いと思うが、出来高まで調べている人は稀であろう。大阪比30円の小幅安で引けたものの、速報ベースで発表された出来高は実に12万7000枚を超えていた。
ちなみに衆院の解散が決定してから5月21日までの平均出来高は3万7000枚程度であり、その3倍以上が出来たことになる。
リーマン・ショック後の安値からの相場において、出来高が10万枚を超えたのは、震災時に1日、米国の格下げ時に2日あっただけであり、市場がとても緊張度を増していたことが分かる。しかし、この日ダウは80ドル安となったものの、ニューヨーク証券取引所(NYSE)の出来高は通常とあまり変わらず、「日経平均先物だけ何が起きたのであろう」と思ったものだ。
●注目されるシカゴ日経平均先物の出来高
その後、日本時間で高頻度取引と呼ばれる高速の発注システムを駆使した外国人の動きが市場を席巻しているが、あくまでも先物主導の動きであり、外国のロング・オンリーのファンドが現物を売る動きは見られていない。
注目しているその後のシカゴの日経平均先物の出来高であるが、5月23日~6月5日までの平均出来高は7万6000枚であり、まだ、海外時間でも活発な取引が行われていることが分かる。市場が落ち着きを取り戻すには、これが低下する必要がある。
●裁定解消売りは来週金曜日まで
今回の下げを大きくした需給面からの要因として、裁定買い残の解消売りが挙げられる。東証は毎日、2営業日前の株数の異動を発表しているが、それによると、5月23日~5月30日の6営業日で2億4000万株の解消売りが行われている。これを金額ベースで試算すると8800億円余り、つまり、毎日1500億円程度の現物売り(先物は買い戻し)が行われていたのである。
私が計測している裁定買い残高のメドは、リーマン・ショック以前は東証一部の時価総額の1%、それ以降は0.75%である。これが5月16日~5月22日に0.98%程度にまで積み上がっており、解消売りが誘発されやすい状況にあったと言える。
6月3日現在の残高は試算で0.9%程度まで減少したが、今度の金曜日6月14日に3ヵ月に一度のメジャーSQがあることから、ここで解消売りが寄り付きで出されて、その後は売り圧力は減少すると思われる。相場が落ち着きを取り戻すのは6月17日からの週ということになる。
05年~07年の大きな上昇相場においても、06年の夏に1ヵ月程度で日経平均は20%もの調整をしたことがあった。今回、それをあてはめると日経平均は1万2500円~1万2800円の水準となる。この水準を切ってしまうと信用の評価損率の問題が出てくるが、ここまでは調整の範囲内と考えられよう。
●個別銘柄の紹介
ヤマハ <7951>
半導体関連の今期の見込みは収益ゼロであるが、体質改善でこれまでのような赤字計上は避けられる見通し。主力の楽器販売は欧州以外の地域で好調。今期の前提為替レートは、1ドル=85円、1ユーロ=115円で、日経平均採用銘柄で最も保守的な1社。前期の海外売上高比率は55%程度あることから為替メリット大きい。6月5日時点でのPER14.7倍、PBRは未だに1倍割れの0.87倍。
2013年6月7日 記