「がん以外」でも処方増 医療用麻薬で痛み緩和 低い認知度…国が普及に本腰へ
10月22日8時1分配信 産経新聞
関節の変形や神経の損傷などが原因で慢性の激しい痛みに苦しむ人は多く、がん同様に医療用麻薬を使う治療が増えている。患者からは「痛みがウソのように取れた」「穏やかな生活が戻った」という声が聞かれ、依存性も心配無用な半面、認知度はまだ低く、国は本格普及に乗り出した。(八並朋昌)
【写真で見る】元ウィンク相田翔子、麻酔医師と結婚 東京・御茶ノ水駅にほど近い駿河台日本大学病院のペインクリニックは、この名称で昭和38年に発足した「痛み」治療の先駆的存在。麻酔科部長の佐伯茂さん(54)は毎週火曜が外来担当で、今月初めには40人余りを診療した。内訳は腰痛11人、けがや手術などによる神経障害性疼痛(とうつう)8人、関節痛(リウマチ含む)と帯状疱疹(ほうしん)後神経痛が各5人、頚部(けいぶ)痛と鬱(うつ)性腰痛が各2人など。「うち神経障害性疼痛3人、腰痛2人、がん性疼痛1人は医療用麻薬を処方している」と佐伯さん。 痛みの治療は主に、局所麻酔薬で痛みの伝達を遮断するブロック注射、血流改善や消炎作用などのレーザー照射、薬物療法がある。 「慢性疼痛の原因は複合的な場合が多く、既往歴や血液検査、MRIでは特定できない人が1割いる。5種類の薬を少量ずつ投与して鎮痛効果をみるドラッグチャレンジテストで、痛みの質がある程度分かるが、すべて当てはまるわけではない。神経ブロックを5回ほど続けても効果がなければ薬物療法を行う」 薬物は主に麻酔薬と医療用麻薬。がん以外に使える医療用麻薬はリン酸コデインと塩酸モルヒネで、モルヒネは粉薬、錠剤、注射に限られる。「モルヒネの効力はコデインの6倍で、有効性に限度もないが、この強い効力は激しい痛みと打ち消し合うので、処方を守れば依存性は心配ない」 便秘、吐き気、眠気の副作用が人によって強く「服用を断念した人もいる」が、6割以上の人に効果があり、「痛みから解放された」「夜眠れるようになった」「活動的になった」という声が聞かれる。 佐伯さんを受診した40代男性は「良性腫瘍(しゅよう)の圧迫と3度の開胸手術の癒着で痛みが激しいが、モルヒネの服用で救われた」という。 モルヒネなどは平成2年に世界保健機関(WHO)が、がんの疼痛緩和法を示して処方が拡大。「がん以外の慢性疼痛にも、生活の質向上のために処方するようなった」と佐伯さん。 厚生労働省のまとめでモルヒネ(塩酸モルヒネ)の出荷量は昭和53年の8キロが、平成3年に102キロ、18年には336キロと42倍に増えた。それでも「欧米に比べモルヒネなど主な医療用麻薬の1人当たりの消費量は最大17分の1」と医政局総務課長補佐の大竹輝臣さん(36)は指摘する。 「昨春施行のがん対策基本法に疼痛緩和が盛り込まれたが、がん以外はまだまだ。モルヒネはがん以外に使えないと誤解する医師も多く、適切な痛み治療を受けられない人が少なくない」という。そこで、昨春着手した在宅緩和ケア対策推進事業で「正しい知識の普及や診療科を超えた医療の連携、人材確保を図り、痛みの通院治療態勢の充実を目指す」という。 佐伯さんは「慢性の痛みに苦しむ人は、ぜひ専門医に相談を」と呼びかける。日本ペインクリニック学会のホームページでは専門の診療施設を紹介している。 |