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景色に溶け込むアズキ色 車内を改装し居住空間に
福知山市雲原に、阪急電車の車体1両が置かれている。尼崎市に住む男性が、セカンドハウスとして持ち込んだもので、車内は床などを張り、生活できるように改造。おなじみのアズキ色の車体は山々に囲まれた周囲の風景に溶け込み、地域の「名物」にもなっている。
1両を3部屋に仕切り
持ち主は尼崎市武庫之荘在住の芳森澄男さん(71)。以前から電車が欲しくて、当初はJRの車体を望んでいたが、自宅近くの阪急電鉄・武庫之荘駅の駅員から、解体される阪急電車の車体を売ってもらえることを知り、阪神淡路大震災の翌年の1996年(平成8年)に購入。雲原に所有する土地に置くことにした。
冬の寒さは厳しいが住み心地は抜群
車体は64年(昭和39年)に製造されたもので、全長20m、幅2・8m、高さ3・7m、重さは38tある。京都線や嵐山線で走り、震災の年まで現役として活躍した。
購入費はレールと枕木がついて10万円と安かったが、福知山までの運搬・設置費が約300万円かかった。セカンドハウスとしての利用のため、車体内部は消毒したあと、生活できるように改装。床に板を敷き、その下には断熱材を入れて、1両をカーテンレールなどで3部屋に仕切った。座席は取りはずさないで、ソファ替わりにしている。つり革も一部はずしているものの、多くがそのまま。運転室は国道175号に面しており、見晴らしが良い。
玄関には表札も
運転室の後ろの部屋は家族が訪れた時に使う部屋。その後ろは芳森さんの寝室。最後尾は居間としてこたつなどを置き、くつろげるようにしている。車体の最後尾とくっつくような形で台所とトイレ、玄関などを備えた建物を造った。改装や建築はほとんどが自分の手で。大工経験を生かして、住みやすいように工夫している。電気や水道をひき、玄関には表札もかけた。
住居として使うようになったのは6年前から。建築のオペレーターの仕事をしながらも月の半分は雲原に戻り「電車」で暮らす。
「住み心地は抜群」と芳森さん。この地方は盛夏でも涼しく、扇風機も夕方に使うぐらいという。半面冬は、車体が鉄製のため、寒さがこたえるが、「こたつに入っていたら大丈夫」と話す。
国道に面していて、車の行き交う音は響くが、実家のある尼崎のほうが、飛行場が近いためジェット機の騒音でうるさく感じるという。最初のころは家族も来ていたが、今はほとんど芳森さんだけが訪れ、炊事や洗濯、掃除などをこなす。「こちらにいる時は草刈りやペンキ塗りなど、忙しく動き回っています」
車体はさびやすく、特に雪が当たることが多い右側面は腐食が激しい。このため3年に1回程度塗り直す。
ドライバーの注目の的 かつての車掌も訪れる
「なんでこんなところに阪急電車が…」と驚くドライバー。「珍しい」と車から降りて、記念写真を撮る人。偶然、車体番号「2861」を見て、家の近くを走っていた電車と分かり、じっくりと眺めに来た人がいた。この電車の車掌だったという人が、かつての仕事場だった車体を懐かしそうに見つめる姿もあった。
趣味は「ここ(雲原)で暮らしてのんびりすること」という芳森さん。「車体は塗装さえきっちりすれば何年も持つ。元気な間は補修していつまでも大切にして住みたい」と望む。
アズキ色の車体は雲原の四季の自然によく似合う。「この色で本当に良かった」と、つくづく思っている。
【写真上】アズキ色の車体は雲原の四季に似合う
【写真下】車体の最後尾と連結するように台所などを造った
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