忘れる女 | 重ねの夢 重ねの世界 ~いつか、どこかのあなたと~

重ねの夢 重ねの世界 ~いつか、どこかのあなたと~

あなたの夢とわたしの夢が重なる時…もうひとつの「重ねの世界」の扉が開く

「忘れる女」



夜の海がありまして


そこから風が吹くのです




夜の海から生まれ出でた


巻貝の



その壊れた


螺旋を通り


シューシューと


海の風が吹くのです



慣れてしまえば


どおってことはありません


忘れていれば良いのです



気鬱なことも


煩わしさも


悲しみさえも



どおってことはありません


すべて


忘れてしまえば良いのです




耳の中で


シューシューと


海の風が吹いてます



どおってことはない


すぐに忘れてしまうのだから




このまえ映画を観ていた時に


スクリーンを眺めながら


何か忘れていたことを


ふと思い出しそうになりました



たぶん・・・


いつか、どこかで


私は誰かを殺していたのです


そして忘れているのです



忘れなくては


忘れなくては



そうして忘れてしまっているのです


だから


思い出してはいけません



そうすれば


どおってことはありません




シューシューと


海の風か吹いてます



そのうちに


あなたのことも忘れるでしょう



巻貝の


壊れた螺旋を通り抜け




夜の海からやってくる


この風と共に


忘れなければなりません



あなたもきっと


私を忘れているのでしょう



それもまた


すぐに忘れてしまうことでしょう



どおってことはありません




夜の海から生まれ出でた


巻貝の



壊れた螺旋を通り抜け


シューシューと



シューシューと


海の風が吹き続けるから



忘れてしまえば良いのです


なにもかも




なにもかも


忘れてしまうのだから



どおってことはありません









煌月