起承転々☆ユングフラウの花々たち

起承転々☆ユングフラウの花々たち

『エウレカセブンAO』OVAヨタ日誌。期間限定で公開しています。
コラムはこちらでも公開中⇒『エウレカセブンAO』公式サイトhttp://eurekaao-prj.net/

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本編6話でアオは磐戸島を出る。

アオにとって、島を出てゲネラシオンブルに来たことは、
物理的に「越境」した、といえる。

しかし、心機一転、環境が変わったからといって、
人間はすぐに新しい場所に適応できるわけではない。
引越ししてすぐに新しい土地になじめる人は少ない。

これは、空間的な移動だけでなく、
「子ども」から「大人」になる発達的な移行プロセスでも同じである。

本編の『エウレカセブンAO』のモチーフのひとつは、
“パラレルな時空の移動”である。

母親であるエウレカは、
「時間という境界」を超える。

そして時間を超え過ぎたことが原因で、
自分の「肉体という境界」さえも溶解してしまう。

エウレカは時空を彷徨う旅の末に、
自分の運命をも超える。

アオも不確かなアイデンティティを収束させるべく、

自分のなかの「何か」を超えていく。

青年期のひとつの発達課題といえばそれまでだが、
「ガイジン」と呼ばれ続けたアオのアイデンティティは常に曖昧だ。

OVAにおけるコスプレは「越境装置」であり、「プチ家出(コスプレ付)」は

アオが「ガイジン」から「ゲネブルのアオ」になるためのドライブなのだ。

 

最終的に、アオは「少年時代」を超えて
「大人」への扉をあける。

OVAはそういう意味で、少年のモラトリアムのひととき、
いわば「夏休みのある日」である。

「そういえば、そういう気分になったことあったなあ」
と、観てくれた人がアオと重ねて感じてくれるとうれしい。

さらに、観た人それぞれの「夏休みのある日」を
ちょっと思いだしてくれるといいなと思う。

なぜならば、その「夏休み」はきっと
その人の心のなかの大切な宝物だから…。

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OVAは、8話と9話の間のハナシという設定。

磐戸島を離れてパイドパイパーの一員となったのはいいけれど、

“まだ新しい環境になじめない時期のアオ”のサイド・ストーリーである。

言ってしまえば、クラスにまだなじめない転校生が、
一泊旅行でクラスメイトの女子2人と
“友だち”になるドラマなのだ。

“友だち未満”のフレアとエレナとしては、
コスプレもゲネブルのアイドル投票サイトに投稿するのも、ノリであって、

ついつい悪気なくやってしまうわけだけれど、
アオにしてみればセクハラに近いイジメ、もといイジラレっぷり。

アオは気がつかないうちに、
“アンマー・エウレカ”の格好までさせられる。

 

途中で何度か抵抗しつつも、最後には
着ていることさえ気がつかないくらい馴染んでしまう。

そして、エウレカのコスプレに無抵抗になるにつれて、
パイドパイパーに馴染んでいく。


このプロセスは、実は、
アオが「転校生」という枠から出るイニシエーションでもある。

イニシエーションとは、
人類学の用語で「大人になるための儀式」を意味するが、
OVAにおけるアオのイニシエーションは
「コスプレ」なのである。

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「彼女そのものじゃないか」

「生き写しだな……」

 

ブックレット「EUREKA SEVEN ARCHIVE」のなかで、

多根清史さんが前作とのリンケージとして言及していたセリフである。

 

このシーン、正直いえば、作っている最中には
コスプレで「生き写し」ってのも強引かなあ、と思っていた。

しかし、OVAの目指すところは
アオがちょっと大人になる物語。

「磐戸島から来たよくわからない少年」だったアオは
当然、パイドパイパー隊でも仮のメンバー扱い。
「エウレカの息子」と言われ続けるアオ。

アオの自分に問う。
「今の自分は何ものか?」と。

コスプレは、アオが問いに答えるはじめるきっかけであり、

アイデンティティという山に登るための装備なのだ。

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エレナのコスプレは、
とあるキャラに決めていた。

なので、コスプレした
エレナがエモノを構えて言うセリフは
「お前の魂、いただきまーす!」。

これはエレナ役小早川千明さんのデビュー作
『SOUL EATER』のマカのセリフである。

高校3年生のときに、『SOUL~ 』のマカ役でデビューした小早川さんも
今年で声優5年目。これからも頑張れ!応援してます!

―というスタッフなりの勝手なエールを送ったつもりだったのですが、
アオ役の本城雄太郎くんの一言に全員がびっくり。

「それが放映されていたとき、小学生でした!」


小早川さんが凹んでいたのが印象的でした。

確かに、「小学生のときに見てた」って言われると凹みますよね。

アオ役本城くんはリアル高校一年生ですが、
何年後かには後輩に言われることもあるかも知れません。

「『エウレカAO』を見てましたよ、小学生のときに!」
(【最終回】につづく)

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シナリオ会議の中盤のこと。
メーカーからのあるリクエストがあった。

「メインコンシューマーである30~40代のユーザーがグッとくるもので」

この一言で、
なつかしアニメのコスプレが提案されていった
。

 

制作当時は実写版「あしたのジョー」が公開された頃だったので、

エレナが丹下段平風に「立つんだ、アオ!」と言ってみたり、

トラ柄のビキニを着せて「許さないっちゃ!」とか言わせたり、

タ○ムボカンよろしく「ポチっとな」とか、


30~40代にはおなじみのアニメネタを入れてみたものの、

どれも“とってつけた感”が拭えずお蔵入りとなった。

 

そこで世代しばりは一旦置いて、せっかくスイスなのだからと
アルプスゆかりのものをチョイスしていった。


某アルプスの少女を筆頭に名作劇場からは、
『ロミオの青い空』、『ペリーヌ物語』、
『ふしぎな島のフローネ』。

bones
作品では、『GOSICK』もスイス周辺のお話。

が、アオにヴィクトリカばりのフリフリドレスは着せられない…。

結局、フツーのコスプレに落ち着いくことになった。

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2012
年3月末。
コンテも決定稿となった。

いよいよ作画である。
とはいえ今回の設定は「すべておまかせします!」。

というわけで、なりゆきで
コスプレ衣装は演出の私が描き起こすことになり…。

エレナについては、
私服(耳としっぽ付)、スクール水着、エレナのマカ風コスプレ服。


アオについては、
ぺチスカートのついた家出服、黄色いワンピースとかつら、牛の着ぐるみから

○んま風チャイナ、セーラー服まで設定を描くことになる。

 
エレナ手作りの「家出のしおり」、エレナ&フレアの鞄、お風呂グッズなど、
演出チェック時に新たに描き起こした小物も多く、かなり出たとこ勝負。

最後までドロナワで進んだOVAだった…。
と思います
。

とはいえ、今回のコスプレは
「アオの女装は意外とイケル」という裏テーマがあり、

しかも、メーカーからは「80年代のもの」というオーダーもあり、
シナリオ会議はコスプレでも迷走した。

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自分以外の人が「石」でハラを痛めていたころ、
こちらはこちらで難産ぎみのコンテにハラを痛めていた。

当初のシナリオは大スペクタクルだった。

ゆきだるまシークレットが市街地を破壊し、
市中とカメリア植物園が大破。

ユングフラウの花々が踏みにじられ、火の手が上がるなか、
逃げ惑う市民。
阿鼻叫喚の様相。

それを見ていたフレアたちが立ちあがる!

――という流れだった。

しかし

「破壊される街並み」
「燃える市街」
「縦横無尽に散る市民」
「泣きわめく子どもたち」

当然のことではあるが、制作サイドは難しい顔である。

OVAは圧倒的に時間が足りない。
作画スタッフは本編で手一杯。
いろいろと問題があった。

台所事情が悪いから削るのはどうかと思うものの、

阿鼻叫喚シーンが演出意図的にも効果がない。
と個人的には思う。

人が傷つき死ぬシーンには
それを支える明確な意図がなければいけない。
「人を殺す」のは難しいのだ。

コンテの段階で街のシーンは削ることにした。そして、
OVAのもともとのオーダー「コスプレで戦う」シーンを増やすことにした。

結果として

「まるで彼女そのものだな」とつぶやくイビチャは
本編最終話のアオとリンクする。

母親の人生をトレースしながらも、
いつしかそれが自分のオリジナルな軌跡となっていく。

コスプレの本質は、「なり代わり願望の充足」ではない。
むしろ「新たなる自己の再発見」である。

アオのコスプレにも深い理由があるのである。
(【第4回】につづく)

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コンテも終盤になるとやってくるものがある。
制作からの牽制球である。

ことあるごとに、
カット数や内容に関するシビアでリアルなお話を聞かされる。

「バトルシーンは50カット以下で、内容も重くないようにお願いします」
とかなんとか言われるのである。

「時間が押しているので、なるべく早くコンテを出してください」

と、ダブル牽制球もあり。

それが出来れば苦労はしない。

と心でつぶやきつつ、「善処します」と答える。

とりあえず前に進むのだ。
ひたすらコンテの升目を埋めることに没頭する。

この段階にくると、とにかくとにかく時間が惜しい。
寝る時間以外はコンテのことしか考えられない生活になる。

なる…ハズが、
ある日家に帰ると「石」で苦しむ家族が待っていた。

石といっても、
ダイヤモンドでもなく
「賢者の石」などの素敵な石ではなく…。

それは、「尿道結石」という名前の素敵な石。

 

なぜか、同じ時期にOVA制作担当氏は「尿管結石」、

本編演出の家族も「尿道結石」で苦しんでいた。

ほぼ同時期に救急車を呼んでいた。

ある意味「石のシンクロニシティ」。

 

OVA制作担当氏は入院し、手術、2週間の入院を経て復帰して、
最後までOVAを担当してくださいましたが、

「石」は本当に痛いらしいです…。


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2012年2月。コンテも大詰め、
5月の納品まであと3ヵ月。

OVAは、本編9話前後のハナシという設定。
そのときにはまだ後半の構成は未定だった。

ラストの課題はコスプレでのシークレット戦。
まずは基本フォーメーションを踏襲することが大事。

アレルヤが索敵、
データに則ってキリエが一斉奏射、
そして、
ニルが接近戦でとどめをさす。

この流れをどれくらい盛り上げるかは
作画以降の現場のモチベーション次弟である。

コンテの時点で押さえるべき問題は、ただひとつ。
アオの気持ちの変化のみ。

チーム・パイドパイパーの一員として、ミニスカートもなんのその

「一人前のパイロットとして」シークレットを倒し、チームの結束が高まる、
というアオたちの心情変化をきちんと描くことがコンテの最優先課題となる。

とはいえ、スパッツを履いているとはいえミニスカで戦闘…。
あざとい。

イロモノ・シーンでありつつも、アオのちょっとした成長も描きつつ、
うーんうーん、難しい、難しい、難しくて苦しい。

日ごとに胃が痛くなる。
しかし、本当にハラを痛めたのは演出の私ではなかった…。

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