12時の鐘が鳴った。

 いけない、急いで帰らなくては。

 みんなの前で魔法が解けてしまう。

 本当の姿を晒すわけにはいかない。

 踊っていた王子さまの手を振り払い、一生懸命駆けた。

 駆けている最中、私の身体から薄い煙が立ち昇ってきた。

 いよいよ、魔法が解ける。

 間に合うか。

 必死で出口に向かう。

 なんとか間に合った。

 外に出たとたん、私は元のみすぼらしい姿に戻った。

 そのとき、靴を片方履いていないことに気が付いた。

 魔法がかかった、ガラスの靴。

 あの靴を頼りに、王子さまが私を探しにきたらどうしよう。

 だが、シンレデラの心配は杞憂に終わった。

 魔法が解けると同時に、美しいガラスの靴も、汚い草履に戻ってしまった。

 王子さまや周りの者は、狐につままれたような顔でその草履を見ていた。

 やがて、王子さまが汚いもの捨てるように、草履をを放り投げた。

 あれはなんだったのだ。みんな、口にしない。

 そして、何事もなかったかのように、舞踏会はそのまま続けられた。