僕は、陰キャラだ。
人見知りが激しく、夏休みが開けても、クラスで馴染んだ友達がいない。
勉強も運動も駄目だ。
だから、目立っている。
何人かのクラスメイトが、毎日僕を苛めてくる。
暴力こそ振るわないが、酷い言葉をガンガン浴びせてくる。
それなのに、なにも言い返せないで、ただ俯いている。
「あななた達、いい加減にしないさいよ。高校生にもなって弱い苛めをして、恥ずかしいと思わないの」
ある日、僕を助けてくれたのは、男子生徒はおろか、女生徒でも憧れの的であった、学校のマドンナといってもいい美咲さんだ。
美咲さんに強い調子で注意されて、僕を苛る者はみんなしゅんとしてしまった。
「あなたも、男なら反撃しなさいよ」
この言葉は、これまでのどんな苛めより堪えた。それから苛められることはなくなったが、美咲さんの言葉がいつも僕を苛んでいた。
このままではいけない。
1ケ月ほど経って一念発起した僕は、ボクシングを習い始めた。
あれから五年、僕は今、世界タイトルマッチに臨もうとしている。
「あなた、頑張ってね」
妻となった美咲の声援を受けて。
