自滅という言葉がある。

 野球の世界でもそうだ。

 俺は、悔やんでも悔やみきれない失態をした。

 夏の高校野球の予選で、決勝まで勝ち進んだ。

 このゲームに勝てば、憧れの甲子園に行ける。

 決勝戦は0対0のまま、9回を迎えた。

 試合は、2対0で俺のチームが勝っていた。

 俺は、ピッチャーだ。

 9回裏の相手の攻撃。

 ツーアウト、ランナーなし。

 俺は、勝ちを意識するあまり、慎重にいき過ぎた。

 ファーボールをふたつ与えて、サヨナラホームランを打たれてしまった。

 いや、慎重になり過ぎたのではない。

 点こそ奪われなかったが、ファーボールを与えたバッターは、いずれも2つヒットを放っていた。

 ヒットを恐れて、俺は逃げた。

 まさに、自滅だ。

 真っ向勝負してヒット、ヒットで繋がれてホームランなだ諦めもつくが、逃げる気持ちで2人にファーボールを与えて逆転負けとは、なんとも情けなく、悔いが残る。

 あれから俺は、なにがあっても逃げないよう心掛けている。