「そろそろ、いい頃だろう。今から、カレンをおびき出す」
夜も更けた頃、スコットが誰にともなくそう言って、携帯電話を取り出した。
「なんて言うんや?」
悟が、緊張を隠せない顔で訊いた。
無理もない。カレンを裏切ると約束したものの、いざカレンがやってくるとなると、やはり怖いのだろう。
「まあ、聞いてな」
悟の質問に鷹揚に答えると、スコットは悟と緒方にも聞こえるよう、電話にマイクを接続した。
「スコットだ」
「ハイ!」
スコットの呼びかけに、陽気なカレンの声が返ってきた。
「そっちはどうだった?」
「思った通りだったわ。もちろん、片は付けたけどね」
「そうか、残念だが仕方がないな」
スコットが邪悪な笑みを浮かべて、緒方に向かい指で丸を作ってみせた。
緒方も、下卑た笑いを浮かべている。
「ところで、こっちは少し場所を移動したよ。ヒューストンが裏切り者だったとしたら、同じホテルにいるのも危険だと思ったんでね」
「そう」
「大丈夫、サトルは無事でいるから、安心しな」
「わかった」
「で、今後のことを打ち合わせしたいから、今からこっちへ来てくれないか?」
「直ぐには無理ね。後始末をしなければいけないから。多分、夜中になると思う」
「わかった。では、後始末が終わり次第こっちへ来てくれ」
「何処へいけばいいの?」
カレンはまったく疑っていない。
「ここは郊外にある廃校だ。場所は…」
スコットが、詳しい場所を教えた。
「了解。じゃ、サトルに代わって」
「ちょっと待ってろ」
そう言うと電話を保留にした.。
「いいか、これからお前に代わるが、余計なことを喋るんじゃないぞ。少しでも私たちのことをバラす素振りを見せたら、そのときは即座に撃ち殺す」
スコットが、険しい声で念を押す。