二人が内調の建物を出て少し歩いたとき、上から爆発音が響いた。
路上に窓ガラスの破片が降り注いでくる。
「やっぱりね」
カレンがうすら笑いを浮かべた。
「あれは、情報官室じゃないか。どういうことだ?」
桜井は状況が呑み込めず、爆発した部屋を見上げている。
「あんな奴が、潔く自決するなんて思ってたの?」
カレンはまだ、笑みを浮かべたままだ。
「あの銃声は、自分に向けて撃ったのではなかったのか」
半ば独り言のように呟いた桜井に、カレンが答えた。
「でなければ、こんなことにならないわよ」
「何をした?」
長居は無用とばかりに、二人は足早に建物から遠ざかりながら話をしている。
「彼からプレゼントされた物を返しただけよ」
「高柳からのプレゼント?」
「そう、私の車に仕掛けられた爆弾をね、あの部屋の窓に返しておいたの」
カレンが何のことを言っているのか、桜井にはさっぱりわからない様子である。
「あなたは知らないでしょうけど、東京へ着いた日に、私のハマーに爆弾が仕掛けられてたの。エンジンを掛けるとドカンとくるやつ。仕掛けたのは、多分オガタでしょうね」
「緒方が?」
桜井が足を止めた。
「そうよ。さっきあなたは、あの戦闘のあと、タカヤナギがオガタを抱き込んだと言っていたけど、オガタはね、最初からタカヤナギとグルだったのよ」
「どうして、そう言い切れる?」
「あの戦闘でまともに戦っていなかったのはオガタだけよ。確かに、オガタは私たちに比べれば戦闘力は格段に落ちるけど、あそこまで酷いことはないはずよ。多分、赤い金貨に遠慮していたのと、これから贅沢しようってときに、あそこで死んだりすれば損だと思ったんでしょうね。それに、いくら人目につく場所に停めてあるといっても、ターニャやリュウだったら、もっとうまく爆弾を仕掛けるわ」
「警告だったかもしれないじゃないか」
「彼らは警告なんてしない、問答無用よ。それに、警告にしても幼稚すぎるわ。あんな幼稚な仕掛け方はオガタにぴったりね。可哀相に、彼は自分の能力を過信しているけどね」
カレンの言うことに、桜井はなるほどと頷いた。