「あなたの推理もたいしたものだったけど、元々CIAの開発したものを盗んだのは赤い金貨よ。だから、CIAの裏切り者が赤い金貨に売りつけようとしいてたのではなく、赤い金貨が、アメリカを憎んでいるどこかのテロ組織へ売りつけようとしてたってわけ。それが、どこから情報が漏れたのか、ロシアに嗅ぎつけられてターニャが現れたので、リュウを日本へ呼んだのよ。でも相手がターニャだから、リュウでも対処できるかわからないので、万一のことを考えてターニャに売りつけようとしたってわけなの」
カレンの説明を聞いて、桜井はしばし呆然とした。
「驚いたな。どこから、そんな情報を?」
ややあって、驚きから立ち直った桜井が、首を振りながらカレンに尋ねた。
「私は、あなたより赤い金貨には詳しいのよ」
「そうか、色々と因縁がありそうだな」
そう言ったが、桜井はそれ以上は何も尋ねようとはしなかった。
桜井の勘は当たっていた。
カレンと赤い金貨の因縁は深い。
悟は知らないが、カレンと悟を結び付けた事件も、赤い金貨が絡んでいた。
カレンが今回の依頼を引き受けたのは、ターニャが絡んでいるからだけではない。
悟には言っていないが、カレンが依頼を受けた一番の目的は、赤い金貨に復讐するためだ。
カレンの復讐。
それは、自分を庇って命を落としかけた悟の報復だ。
あのときカレンは、悟を助けるのに必死で、悟を撃った人間を殺していない。
カレンは、悟を撃った男の顔を今でも鮮明に覚えている。
自分のことなら任務上と割り切れるカレンも、こと悟のこととなると、人が違ったようになる。
悟には気を遣わせたくないので黙っているが、カレンは、悟に生死の境をさ迷わせた奴に、銃弾を撃ち込まないことにはどうにも収まらないのだ。
これが、カレンの愛し方だった。
「それにしても、いつ、あんたが赤い金貨のメンバーになったんだ?」
「最初からでしょ」
高柳に代わって、カレンが答えた。