「君はカレンに言われて、勤めていた会社を辞めたんだったな。どうだ、カレンを殺ってくれたら一億円やろう。暫くは遊んで暮らせるぞ」
「そんなこと言うて、カレンを殺したあと、俺も始末する気なんやないやろな」
疑い深そうな目をする悟に、スコットが苦笑する。
「君の疑念はもっともだ。今まで、そんな場面ばかりを見てきたんだろうからな。しかし安心したまえ、君にはまだ遣い道がある。そんな君を殺しはせんよ」
「遣い道?」
「そうだ。カレンを片付けたあと、ターニャも同じように片付けてもらいたい。どうやらターニャも、君をお気に入りのようだからな」
「ターニャを… ちょっと待てや、へたしたら、ターニャはカレン以上に危険やで」
悟が慌てた。
顔が蒼くなっている。
そんな悟を落ち着かせようとでもするように、スコットが宥める口調でゆっくりと言った。
「心配することはない、直ぐにとは言わん。カレンを殺ったあと、君は少し羽を伸ばせばいい。ターニャとは、その後で接触すればいいんだ。そして、暫くターニャと一緒に暮らすんだ。そうすれば、カレンと同じくターニャはいつでも殺れる。もっとも、その間は私に情報を流してもらうがね」
「それで、一億は安いやろ」
動揺から立ち直った悟が、小狡そうな目をしてスコットを見た。
「ターニャには、もう一億出そう」
スコットが指を一本立てて見せた。
「全部で二億か」
スコットの提案を真剣に考えている様子で、悟が腕を組んで俯いた。
やがて顔を上げて、指を一本立てながら言った。
「そんだけの危険を冒すんやったら、あと一億くらい貰いたいな」
にやりと、スコットが笑う。
「抜け目のない奴だな。よし、カレンに一億、ターニャに二億出そう。一億は情報代だ。これで、文句はなかろう」
「しめて三億か」
それでも、悟は返事を渋っている。
「三億では不足かね?」
「いや、金額は申し分ないんやけど」
「では、商談成立だな」
「その前に、一つ聞いてもええか?」
「何だ?」
なかなかうんと言わない悟に、スコットが少し苛立った様子を見せた。