二人は手を繋いで、思い切り屋上から飛んだ。
二人の身体が宙に浮いたとき、五階も爆発した。
爆風に煽られた二人は一瞬浮き上がり、勢いをつけて前方へと飛ばされた。
「しっかり、私の身体にしがみついて。絶対、離しちゃ駄目よ」
落下しながら、カレンが叫んだ。
言われた通り、悟がカレンの腰にしっかりと腕を回す。
地面に激突するかと思われた時、いつの間に手にしたのか、カレンが街灯めがけてムチを振った。
ムチはしっかりと街灯に絡まり、二人の身体は振り子のように揺れた。
「ひゃっほう」
風を切る音と共に悟の叫ぶ声が、カレンの耳に飛び込んできた。
暫くの振り子運動のあと、二人は無事、地面へと足を着けた。
「いや~ バンジージャンプより迫力あったな」
悟がにこやかな顔をして、カレンを見た。
そんな悟を、カレンは異星人を見るような目付きで見返している。
世界最凶と謳われたカレンですら、あの状況で歓喜の声を上げる悟を、薄気味悪く思っていたのだ。
「どうしたん?」
カレンの視線に、悟が不審を覚えたようだ。
「あなた、怖くはなかったの?」
カレンが、呆れるのを通り越して、半ば恐れたように尋ねる。
「カレンを信じとったからな。それに言ったやろ、カレンと死ねるんやったら本望やって」
この言葉で、カレンは悟った。
悟は本当に、自分のことを信じきっている。
そして、自分がサトルのいない生活が考えられないのと一緒で、サトルも自分のいない生活が考えられないのだ。
だから、ああいった状況でも生死を超えていられるのだ。
また、そうすることが、自分に負担を掛けないだろうということもわかっている。
それを知ったカレンは感動に打ち震え、何も言葉が出てこなかった。
「結局、オコーナーはおらんかったな」
倒壊するビルを眺めながら、悟がため息をついた。
「そうね。どうやら、嵌められたようね」
カレンもすでに、いつもの冷静なカレンに戻っていた。
「なあ、やっぱり、オコーナーが爆弾を盗んだなんて嘘とちゃうか? 俺には、どうもカレンを陥れるために、ヒューストンが仕組んだんやないかと思えて仕方ないねん」
「どうだか? とにかく、前へ進みましょ。そうすれば、自ずと真相が見えてくるはずよ。どっちにせよ、ここまで来れば引き返せないもの」
さばさばとした口調で、カレンが答えた。
「そうやな」
カレンの言葉に、悟が力強く頷いた。