もう、誰も信用しない。

 これまで頑張って働いてきたのに、ちょっと業績が悪化したからといって、非常にもリストラされてしまった。

 それがわかった途端、彼女は去っていった。

 長年の友人だと思っていた奴は、その彼女と付き合っている。

 どうやら、前から寝取られていたみたいだ。

 それらが重なって、人間不信に陥ってしまった。

 これまでは、人を信じることを心掛けてきた。

 それが、人間関係をうまく保つことだと思っていた。

 今は、ただのお人好しということがよくわかる。

 自棄になった俺は、キャバクラへ行った。

 これまで、そんな店へ行ったことはない。

 どうせ人を信用できないなら、騙して金を取る店に行ってやろうと思ったのだ。

 しかし、俺の想像と違った。

 隣に座った子に、そのことを話すと怒られた。

 慰めもなく、同情もせず、ただ怒られた。

「悲しい人間になるな」

 その言葉が、俺を元に戻した。

 それから頑張って職を探し、今はその子と結婚して幸せな家庭を築いている。

 そのとき、その店に行かなければ、俺は駄目な人間になっていただろう。