順平は、いつも嘆いてばかりいた。

「生きづらい世の中だ」

 それが、順平の口癖だ。

 毎日、会社や上司の愚痴やばかり聴かされ、テレビに向かって文句ばかり言う順平に、妻も愛想を尽かして、出ていった。

 自分が悪いわけではないのに、なんで俺だけ?

 その鬱憤を、キャバクラに行って晴らすようになった。

 キャバクラでは、金さえだせば、ちやほやしてくれる。

 その時間だけ、順平の鬱憤は腫れる。

 しかし、直ぐに鬱憤が溜まる。

 キャバクラ通いを続けていると、順平の貯えは直ぐに底をついた。

「これまで、どれだけの金を落としたと思ってる。今度の給料日まで金がないんだ。だから、今日はツケで遊ばせろ」

 ボーイが伝票を持ってきたとき、順平が怒鳴った。

「あなたって、最低。ここは私が持ってあげるから、もう二度と来ないで」

 馴染みの子に、吐き捨てるように言われた。

 順平は、カッと頭に血が上り、その子の首を絞めた。

 数人のボーイに取り押さえられ、順平は刑務所送りになった。

「俺が悪いんじゃない、世の中が悪いんだ」

 刑務所の中でも、順平は嘆いてばかりいる。