「フン、しっかり鍵が掛かっているわね」

 ビルの入口の鉄扉のノブを捻ったカレンが、いまいましそうな顔をする。

「こんな鍵くらい、開けるのは簡単だけど」

 そう言って、カレンは特殊探知機を取り出した。

何やら画面を操作してからそれを扉に当て、上から下までなぞっていった。

「やっぱりね」

 カレンが鼻で笑った。

「何がやっぱりなんや。それに、今、何したんや?」

 悟の疑問に、カレンが顔を上げて答えた。

「爆弾が仕掛けられていないかチェックしたの。これは爆弾探知機にもなるのよ」

「凄いな」

悟が目を丸くした。

「やっぱりということは、この扉に、爆弾が仕掛けられてるんか」

「ええ、不用意に開けていたら、二人ともバラバラに吹き飛んでいたでしょうね」

 悟はカレンの用心深さに感心した。

「なあ、裏へ廻らへんか」

 悟の提案に、カレンはこともなげに答えた。

「表も裏も一緒でしょ。それに、裏にもカメラがあるだろうし、また止めるのは面倒くさいから、表から入るわよ」

「まあ、カレンがそう言うんやったら、それでええけどな」

 悟が憮然とした顔で答える。

 カレンが腕組みをして、入口のドアを見つめた。

 ドアは鉄製だが、上半分は金網入りの分厚いガラスが嵌っている。

 カレンが小さく頷くと、ポケットから小さな巻尺のようなものを取り出した。

 右手にそれを持ち、左手で小さな吸盤を取り出す。

「何や、それ」

「ガラス切り」

 カレンが短く答えると、吸盤をガラスの真ん中に当てた。

 右手に持った巻尺の真ん中のボタンを押すと、巻尺の一部からカッターナイフのような刃が飛び出した。

「そんなんで、こんなごっついガラスを切れるんか?」

 悟の疑問はもっともだ。

 金網入りの分厚いガラスが、カッターナイフのような薄い刃で切れるとは、到底思えない。

 しかしカレンは、悟の疑問を口ではなく、ガラスを切って応えてみせた。

 カレンが軽く刃を滑らせると、金網入りのガラスが、まるで紙を切るように簡単に切れていった。

「切れたでしょ」

 切り取ったガラスを、吸盤を引っ張って取り外したカレンが自慢げに言う。

「これはね、特殊鋼で出来てるの。こんなガラスなんて、わけないわ」

「そんなん、よう持っとたな」

 悟は目を輝かせている、