画面が切り替わり、カメラの仕様らしきものが表示される。

 それを確認したカレンは、またポケットから何かを取出した。

 今度は、ストレート式の携帯電話のような細長い形をした金属だ。

 黒く塗られた表面には何もない。

 カレンが横のボタンをスライドさせると、頭からピンのような物が出てきた。

 それを先ほどの特殊探知機の側面に繋げ、画面に表示されているOKボタンを押す。

 すると、先ほどの黒い筐体の右上部分が青く光った。

「今度はなんや?」

 青い光を見ながら、悟が尋ねる。

「これで、あのカメラの映像はブロックしたわ」

「ブロック?」

「そうよ。この探知機であのカメラの仕様を解析して、こっちの機械である信号を送ったの。あのカメラは、信号が送られる直前に捉えた映像をずっと流し続けるってわけ」

「ということは?」

「私たちが近づいても、何も映らないわ」

 カレンの両肩に、いきなり悟の手が置かれた。

 その手に力を込め、カレンの顔を正面からじっと見つめてくる。

「なに、どうしたの?」

 悟の突然の行動に、カレンが戸惑いをみせた。

「ほんっまに、カレンは凄いな。俺、尊敬するわ」

 目を輝かせながら、心底感動した口調で悟が言う。

「馬鹿、こんなときに何を言ってるのよ」

 肩に置かれた手を振り払い、軽く悟の頬を叩いたものの、カレンの顔は上気していた。

「さて、そうと決まったら突撃や」

 突然、悟がビルに向かい足を踏み出そうとした。

「ちょっと待って」

 悟の切り替えの早さに呆れながらも、進もうとする悟をカレンが止めた。

「あの中には、どんな罠が仕掛けてあるかわからないわ。サトルはここで待ってて」

 悟が哀しそうな顔をした。

「やっぱり、俺は足手まといか」

「そんなことはない。昨日も、私を助けてくれたじゃない」

 カレンが、静かに首を振った。

 そして少しの躊躇いのあと、悟に本心を告げる決意をした。